ロシア南部ダゲスタンで動員令に抗議 警察と衝突
ウクライナの戦場に予備役約30万人を派遣するための「部分的動員令」をロシア政府が発令したことを受け、ロシア国内各地で抗議行動が続いている。25日には南部ダゲスタン共和国の首都マハチカラでデモがあり、警官隊と衝突した。
ロシアの人権状況を監視する独立系団体「OVD-Info」によると、マハチカラで100人以上が拘束された。同団体は、共和国内で「非常に厳しい身柄拘束」が続いているとの情報が相次いでいるとして、懸念を示した。
ダゲスタン共和国では住民の過半数をイスラム系が占める。
ウラジーミル・プーチン大統領が21日に予備役の「部分的動員」を発表して以来、ロシア各地の主要都市で大規模な抗議行動が相次ぎ、全国で2000人以上が逮捕された。OVD-Infoによると24日だけで700人以上が逮捕されている。ただし、ダゲスタンでは大勢が警察官と衝突しており、ロシアで市民が当局に激しく抵抗する異例の事態となっている。
ソーシャルメディアには、マハチカラで住民が警察など治安当局に立ち向かう様子の動画が、次々と投稿された。OVD-Infoによると、警官たちは群衆に対してスタンガンや警棒などを使ったという。
ソーシャルメディア上の動画の一つでは、当局に取り押さえられた男性が警官に頭突きをした挙句、別の当局者にたたかれる様子が見える。
別の動画では、大勢の抗議グループが当局者を追いかけている。逃げる当局者をつかもうとしたり、足を引っかけて転ばそうとしたりする抗議者もいた。
A group of women successfully chases away a lone policeman at an anti-mobilisation protest in Dagestan https://t.co/TBCl9khPGK pic.twitter.com/jwJLqVPIcO
— Francis Scarr (@francis_scarr) September 25, 2022
別の場所では、兵士の募集受付所を警備する当局者に多くの女性が立ち向かい、ロシアがウクライナで続ける戦争を激しく非難。「ロシアはよその国の領内にいる」と発言する女性もいた。
「どうして私たちの子供たちを連れていくの」と女性たちは叫んだ。「誰が攻撃されたって? ロシアが攻撃されたって? 向こうからやってきたわけじゃない。こちらがウクライナを攻撃したんでしょ。ロシアが、ウクライナを攻撃したんだ。戦争をやめろ」と、口々に続けた。
OVD-Infoはさらに、マハチカラから西約80キロにあるハサヴユルト地区エンディレイ村で、住民が連邦高速道路を封鎖したと伝えている。動員令執行のために地域に入ろうとする治安当局の通行を、阻止するためという。
OVD-Infoが入手した映像では、道路を封鎖する住民グループを前に、警官たちが自動ライフルを空に向かって発射し、デモを解散させようとしたものの、住民たちによる道路封鎖は続いた。
住民の怒りをなだめようと、ダゲスタンのセルゲイ・メリコフ知事は25日、動員の実施について「間違いがいくつかあった」と認めた。
「前にも述べた通り、部分的動員はあくまでも、大統領が発表した基準にしっかり沿って行われなくてはならない」と知事は、通信アプリ「テレグラム」に書いた。
ダゲスタン共和国からはすでにウクライナ侵攻に大勢の兵士が派遣されているもよう。BBCロシア語による最近の分析では、ロシアの他のどの連邦構成主体よりも、ダゲスタン出身の兵の戦死が多い。戦死広報などをもとにした今月初めの集計によると、ダゲスタンから派遣された兵士301人がウクライナで死亡している。これはモスクワ州の10倍にあたる。実際の死者数は、これよりはるかに多いものと考えられている。
招集を逃れようと多くのロシア人男性が国境を越えて、隣国のフィンランドやジョージアへ出国しようとしている。さらに各地で、招集対象外のはずの人にも、現地の担当者が出頭命令を出しているという情報が相次いでいる。
(英語記事 Ukraine war: Protests in Russian Dagestan region against new draft)
(c) BBC News