9月30日、モスクワで、ウクライナ4州併合の「条約」調印を祝う集会に出席するプーチン露大統領(中央)=AP
(写真:読売新聞)
プーチン露大統領はウクライナ東・南部4州のロシアへの一方的な併合を宣言した9月30日の演説で、核使用を示唆してウクライナや米欧を威嚇する一方、停戦協議をウクライナに提案し、侵略作戦が思うように進まない中で次の一手に悩む心中をのぞかせた。
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プーチン氏は4州の親露派トップや政権の高官らを前に、4州の住民は「永遠に我が国民になる」と述べ、ウクライナに返還する意思が全くないことを強調した。「米国は核兵器を2度使った世界で唯一の国だ。先例を作った」と指摘し、「我々は自分たちの領土と国民をあらゆる手段で守る」と語って核使用を正当化した。
ウクライナのゼレンスキー政権に対しては、「戦闘停止を求め、交渉の席に着くよう求める」と唐突に切り出しながらも、併合する4州については協議対象にならないとも主張した。
米政策研究機関「戦争研究所」は30日、プーチン氏の一連の発言の真意について、「ウクライナの破壊」という侵略目的は維持しつつ、戦闘を一時的に停止して露軍の態勢を立て直す時間を稼ごうとしているとの見方を示した。
約40分間の演説では、激しい米国批判を展開した一方で「偉大なロシア」との表現を何度も使って愛国心をくすぐった。ウクライナ侵略を米欧を相手にした「ロシアの言語や文化を守る戦い」と位置付ける姿勢が目立った。兵員補充のために発令した部分的動員を巡る露国内の反発を和らげる意図もあるようだ。
プーチン氏は併合「条約」の調印後に大統領府付近で開かれた併合の祝賀集会に4州の親露派トップと参加し「勝利は我々のものだ」と声を張り上げたが、表情には疲労感が漂った。