韓国雑踏事故「押せ、押せ」の声引き金か 犯人捜し過熱


韓国雑踏事故「押せ、押せ」の声引き金か 犯人捜し過熱

ソウル梨泰院で150人以上が犠牲となった雑踏事故現場近くに手紙を供える女性=31日(桜井紀雄撮影)

【写真】多数の若者らで混み合うソウル・梨泰院の狭い坂道。この後事故が起きた

韓国メディアによると、事故を巡っては「『押せ、押せ』という声が聞こえ、周りの人たちが押されてドミノみたいに倒れた」といった証言が相次いでいる。

ネットに動画を投稿するユーチューバーで、現場にいたという女性は交流サイト(SNS)で、後ろから「押せ、俺らが勝とう」という声がし、「突然、強い力が加わった」と振り返った。ウサギの耳の形をしたヘアバンドの男性ら5、6人が「押せ」と言って押し始めたとの証言もある。

当時は人の波を統制しようと、「後ろに下がって」と呼びかける声も複数上がっていたという。韓国語で「押せ」を意味する「ミロ」と「後ろへ」の「ティロ」は発音が紛らわしく、「後ろへ」との呼びかけを聞き違えて周囲の人が「押せ」と叫んでしまったとも指摘されている。

他にも、現場近くのナイトクラブに逃れようとした人の立ち入りを拒んだとされる警備員に対しても、処罰を求める声がネット上で上がっている。

警察は、事故に巻き込まれた人々が撮影した動画や防犯カメラ50台以上の映像を確保し、事故原因を調べているが、今のところ、犯罪容疑の適用を検討するほどの対象はいないという。

人を故意に押したことが事故を招いたとすれば、未必の故意による殺人罪が適用できるとの指摘もあるが、現実的には「押せ」との声と大規模な転倒との因果関係を立証するのは困難だ。

だが、高校生ら300人以上が犠牲となった2014年の旅客船セウォル号事故当時と同様に、標的を捜しだして、非難の矛先を向けようとする世論の過熱が収まる気配はない。

ウサギの耳形ヘアバンドをして現場周辺にいたことから、ネット上で写真を公開され、個人攻撃を受けた男性もいる。男性は1日、SNSで事故前には別の場所に移っていたと説明。「魔女狩りはもうやめてほしい」と訴えた。



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