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米Politicoは「欧州大陸における米国の重要なパートナーはドイツからポーランドに変わった」と指摘したが、ポーランドは欧米に政治的な不信感を抱いており「韓国から武器購入に米国は不満を抱いている」と報じている。
韓国製装備品は欧米製と比較して割安でタイトな納期にも対応できるのが魅力で、政治的な要因だけで韓国に接近しているとは言い切れない
ドイツは欧州大陸で米国の重要な同盟国で兵站拠点としての役割を担っているものの同国の安全保障政策は「欧州で大規模な戦争は二度と発生しない」という前提で設計され、国防投資も大幅に削減したためドイツ軍の即応性は酷い有様で、米欧州軍の高官は「終わりの見えないドイツ軍の再建議論や安全保障戦略の欠如がパートナーとしての価値を低下させており、ウクライナ支援やNATOのバルト海防衛で重要な役割を果たしたポーランドが欧州大陸における米国の重要なパートナーになった」と述べている。
終わりの見えないドイツ軍の再建議論とは「NATO公約に届かないドイツの国防費に関する議論」のことで、ドイツが今後4年間に支出する国防費は実質横ばいになることが想定されており、2023年度の国防費も約501億ユーロ(GDP比1.7%前後)なのでNATO公約に届かないが、ウクライナ侵攻を受けてショルツ首相が創設したドイツ軍特別基金(1,000億ユーロ)の支出を合わせると2.0%の公約をクリアできるらしい。
この基金の運用は2028年までという制限があるため、ショルツ首相はGDP比2.0%の国防費を維持するのではなく「時限措置の基金で一先ずNATO加盟国と歩調を合わせただけ」と受け取られており、ドイツ軍再建後の戦略もないまま2.0%の国防支出を基金運用後も維持するのかしないのか「終わりの見えない議論」を延々と続けているという意味だ。
逆にポーランドはウクライナ侵攻発生前からロシアの脅威を危惧、昨年10月に時代遅れの国防法を廃止して新国防法を導入、今年5月に新法が発効して現行14万人(現役約10万人+領土防衛軍兵士約4万人)のポーランド軍を30万人(40万人まで拡張する可能性が浮上中)に拡張するため動き出し、2023年の国防支出はGDP比2.4%から3.0%に増加することが確定している。
さらに与党PiSのカチンスキ党首は「最終的に国防支出をGDP比5.0%まで引き上げる」と主張しており、既に陸軍の規模や主要装備の量でポーランド軍はドイツ軍を凌駕、さらに新兵募集で苦労するドイツとは異なりポーランドでは「祖国防衛のための兵役に国民はポジティブだ」と評価されているため、米Politicoは「欧米の国防当局間でポーランド軍の質を疑うものはいない」と報じているのが興味深い。
但し、軍事力の拡張に合わせてポーランドの政治的影響力が拡大するかは別問題だと米Politicoは指摘、その原因は民族主義的な与党PiSが政権を握っているのをEUが問題視している点と、ドゥダ政権が米大統領選挙中にポーランドのことを「全体主義だ」と叫んだバイデン大統領に不信感を抱いているためで、EUやバイデン政権への不信が「ポーランドと韓国の接近に一役買っている」と報じている。
米Politicoは「ポーランドの国防支出引き上げをワシントンは歓迎しているが、来年の総選挙後もPiSが政権の座に留まれるのか=現在の安全保障政策が維持できるのかを危惧しており、幾つかの高額な防衛装備品の調達で韓国を頼ったことを不満に思っている」と指摘、欧州自立を夢見るフランスもポーランドが韓国に頼ったことにショックを受けているが、韓国製装備品は米国製や欧州製と比較して割安でタイトな納期にも対応できるのが魅力で政治的な要因だけで韓国に接近しているとは言い切れない。
国際的な武器供給で存在感を高める韓国について米国では批判的(米企業の競合相手になるという意味合い)な意見もあるが、米企業の製造能力だけで同盟国や友好国のニーズをカバーするのは現実的に不可能なので韓国企業の躍進を歓迎する意見もあり、ポーランドと韓国の取引について国防総省の報道官は「NATOに対する韓国の貢献を歓迎する」と、上院軍事委員会のインホフ議員も「アジアと欧州の同盟国同士が協力して防衛力の強化に動いているのは心強い」と、アンジェロ州立大学のベクトール教授も「民間企業の競争に過ぎず現代ビジネスで当たり前のことで、これを驚異だと誰も思っていない」と主張している。
ランド研究所も「FMS経由で米企業が装備を売却する際、政府は武器開発に投資した研究開発コストを一定額上乗せして回収するため、どうしても売却価格が競合よりも高価になりがちだ。従って少しでも費用を節約したい国にとって韓国が提供する装備品は魅力的だ」と述べているのが興味深い。
Encouraging to see our allies in Asia and Europe working together to strengthen their own defenses. As the CCP and Russia grow even closer, we can and must do more to rebuild the arsenal of democracy across key security partners in both regions.
— Sen. Jim Inhofe (@JimInhofe) August 3, 2022
まぁ欧米の感覚だと「Aという問題」で対立しても「Bという問題」では握手が可能というのが一般的=国益や主権に係わる問題で(外交的に)対立することを恐れないため、今後もポーランドは適度の協調を保ちつつ自国の国益に適った国から装備を調達するだろうし、もし米国が自国企業の利益のため「米国製を買え」と強要すればトルコやインドの二の舞いになるだろう。
因みに米Politicoはドイツについて「ポーランドをロシアとの緩衝地帯と見なしているため、ポーランドが軍隊を増強すればするほどドイツの安全はより確実になると考え、同国の国防支出引き上げを歓迎している」と指摘しており、米国やロシア領と国境を接するNATO加盟国が欧州の安全確保のため動く中で「ドイツはリラックスしている」と皮肉っている。
個人的には日本もドイツ軍の即応性の問題を笑っていられる状態ではないと思っているので複雑な気分だ。
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※アイキャッチ画像の出典:1st Cavalry Division
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