
9日、キルギスで記者会見に出席するロシアのプーチン大統領=ロイター
ロシアのプーチン大統領は9日、核兵器による「予防的な攻撃」に言及し、使用条件を見直す可能性を示唆した。ロシアが侵略するウクライナを支援する米国をけん制する狙いとみられる。
【表】一目でわかる…ロシアの戦力はウクライナを圧倒している
プーチン氏は、外遊先の中央アジア・キルギスで開いた記者会見で核使用について問われた。「抑止力だ」と強調しつつも、「米国には予防的な攻撃という理論があり、最新鋭の攻撃システムを開発している」と主張した。「我々には(同様の理論は)ない」とした上で「米国の安全保障を確保する考え方を取り入れることを検討する必要があるかもしれない」と述べた。
ロシアの「軍事ドクトリン」では、核兵器や大量破壊兵器による攻撃を受けた場合だけでなく、通常兵器による攻撃であっても、国家の存続が脅かされる場合には核兵器の使用を認めてきた。プーチン氏は「予防的な攻撃」の定義について具体的な説明はしなかったが、核の先制使用を指すとみられる。
プーチン氏は、ミサイル攻撃警報システムで攻撃のシグナルを受け取った後に報復攻撃としてミサイルを発射したとしても、「ロシア領内に敵のミサイルが着弾することは避けられない」と述べ、現行システムの限界に言及した。
その一方で「我々には米国にはない極超音速兵器がある」と軍事力を誇示し、ロシアが発射した多数のミサイルを敵が迎撃することも困難だと強調した。米国を威嚇する狙いとみられる。
12月5日に無人機で攻撃を受けた露軍の軍用飛行場は、核搭載可能な戦略爆撃機の拠点だった。ウクライナの外相は9日付の米紙インタビューで、ウクライナ軍にロシア領内を攻撃する権利があるとの認識を示しており、プーチン氏の発言には、ウクライナに攻撃を断念させる思惑もありそうだ。