ウクライナ軍、ロシアの雇い兵組織「ワグネル」の拠点攻撃か ルハンスク州知事が発表
ウクライナ・ルハンスク州のセルヒィ・ハイダイ知事は11日、ウクライナ軍がロシアの雇い兵組織「ワグネル」の本部を攻撃したと発表した。
ハイダイ知事は、ルハンスク州カディフカにある「ワグネル」の拠点となっているホテルが攻撃を受け、ロシア側が「大きな損失」を被ったと説明。医療の不足から、生存しているワグネル部隊の「少なくとも50%」は死亡するとみているとした。
BBCはこのホテルに「ワグネル」がいたかどうか独自に検証できていない。
西側の専門家たちは「ワグネル」について、ロシア政府の後押しを受け、同政府の利益のために活動する雇い兵組織だとしている。
元レストラン経営者でウラジーミル・プーチン大統領に近いエフゲニー・プリゴジン氏が創設した民間軍事会社「ワグネル」は、戦争犯罪や人権侵害を行っているとして繰り返し非難されてきた。
ワグネルの部隊はこれまで、ウクライナ南部クリミア半島やシリア、リビア、マリ、中央アフリカ共和国に派遣されている。
ホテルへの攻撃は、ロシア軍がオデーサをドローンで攻撃し、ウクライナ軍がメリトポリで反撃するなど、ウクライナ南部で戦闘が激化している最中に起きた。
■エネルギー施設にドローン攻撃
ウクライナ軍は10日、オデーサでドローン10機を撃墜したが、複数のエネルギー施設が別のドローン5機による攻撃を受けたと発表した。この攻撃で停電が発生し、約150万人に影響が出ているという。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は毎晩定例のビデオ演説で、「オデーサ地域の状況は非常に厳しい」と述べた。
「残念ながら被害は甚大で、電気の復旧には数時間ではなく数日かかる」
ウクライナ当局によると、主要インフラを攻撃したのはロシアに提供されたイラン製ドローンだという。
■メリトポリの攻防
メリトポリでは親ロシア派当局が、ウクライナ軍のミサイル攻撃により、2人が死亡し、10人が負傷したと発表した。ロシア政府に任命された当局者が公表した画像には、大規模な火災が写っている。
ロシア政府に任命されてザポリッジャ州のロシア占領地を統括するエフゲニー・バリツキー氏はメッセージアプリ「テレグラム」で、「防空システムがミサイル2発を破壊し、残り4発は彼ら(ウクライナ側)の目標物に到達した」と述べた。
また、人々が食事をしていた「レクリエーションセンター」が攻撃で破壊されたとし、ウクライナ軍がアメリカから供給された高機動ロケット砲システム「ハイマース」を使用したと付け加えた。
ハイマースはロシア側の司令部など前線から離れた場所を狙う際に使用され、ウクライナ軍の反攻で重要な役割を果たしている。
3月初旬からロシア軍の占領下にあるメリトポリのイヴァン・フェドロフ市長は「侵略者」数十人が死亡したと述べた。
メリトポリは南東部にとどまるロシア軍にとって主要な物流拠点となっている。街の東にマリウポリ、西にヘルソンとドニプロ川、南にクリミア半島があり、戦略的に重要な都市でもある。
■メリトポリを重要視
ウクライナは冬の到来を迎えたいまも、占領地奪還を目指し反攻を続けている。
ここ数週間、戦闘のほとんどはウクライナ東部、とりわけドネツク州バフムト市周辺で起きている。
しかし10日夜、ゼレンスキー大統領の顧問を務めるオレクシー・アレストヴィッチ氏は、メリトポリがウクライナ軍の主要な目標になる可能性があると示唆した。
「メリトポリが陥落すれば、ヘルソンまで続く防衛線全体が崩壊する」と、アレストヴィッチ氏は述べた。
そして、もしそうなれば「ウクライナ軍はクリミア半島へ直接続くルートを獲得できる」と付け加えた。
ウクライナは、ロシアが2014年に一方的に併合を宣言したクリミア半島を奪還すると誓っている。
(英語記事 Ukraine hits Wagner HQ in weekend of unrest)
(c) BBC News