台湾軍の問題点、伝統的な概念に回帰しているだけで大戦略が未解決

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中国共産党による武力統一を阻止するため台湾側は「徴兵改革=徴兵期間の延長による戦力確保」に期待しているが、英国のFinancial Times紙は「伝統的な2008年以前の状態に回帰しているだけで大戦略の問題が手つかずだ」と指摘している。

もし台湾軍が「分散の概念」を軽視しているなら中国軍にとって嬉しい話だろう

台湾の蔡総統が発表した「徴兵改革=無意味な4ヶ月間の兵役期間を1年に延長」は慢性的な人員不足問題を解決するための緊急措置に過ぎず、米アトランティック・カウンシルで軍事・安全保障分野のアナリストを務めるキッチュ・リャオ氏は「兵役期間を延長する決定は評価できるものの抑止力の核心である軍事力の問題に取り組んでいない」と警告しており、この問題は「兵役期間の延長」と「殆ど機能していない予備役戦力の再建」が台湾軍の訓練リソースを大幅に上回っている点にある。

台湾軍の問題点、伝統的な概念に回帰しているだけで大戦略が未解決

出典:中華民國總統府 / CC BY 2.0

蔡総統の発表と同時に台湾国防部は「国民から『徴兵者は実戦で役に立たない』とか『軍弱体化の象徴』などと揶揄されてきた非効率な訓練プログラム(銃剣訓練など)の見直し、徴兵者にもスティンガーやジャベリンなど近代的な兵器の取り扱いを学ばせる」と説明しているのだが、このプログラムは「殆ど機能していない予備役戦力の再建」のため考案されたもので、リャオ氏を含む国内外のアナリスト達は「何の前触れもなく発表された兵役期間の延長が深刻な訓練のボトルネックになる」と指摘。

台湾軍の徴兵者向け訓練プログラムは前時代的な内容で構成されており、このプログラムで育成された予備戦力は数だけ多いものの「現代戦に適した知識やスキルが備わっている」とは言い難く、この予備役戦力の再建のため考案されたプログラムに「大量の新兵」が流れ込むと「訓練リソースがパンクする」という意味で、リャオ氏は「突然これだけの人数に訓練を施せと言われても必要なリソースをどこで確保するつもりなんだ?訓練の順番が回ってくるまでに何ヶ月も待たされることになるだろう」と述べているのが興味深い。

台湾軍の問題点、伝統的な概念に回帰しているだけで大戦略が未解決

出典:U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. Rachel K. Young スティンガー

まず「スティンガーやジャベリンの取り扱いを学んだ兵士」と「取り扱い方を指導するインストラクター」は完全に別もので、西側製の対戦車兵器や携帯式防空ミサイルを供与されたウクライナ軍も未だに訓練を「英国やカナダなどが派遣したインストラクター」に頼っており、正規の訓練は模擬弾や実弾の実射も伴うため「これだけの人数に扱い方をマスターさせるためのインストラクターや機材が何処にあるのか?=ウクライナ軍は実射の代わりに地上シミュレーターで代用しているらしい」と言っているのだ。

さらに英FT紙は台湾軍の元参謀総長の指摘を引用して「蔡総統の野心的な徴兵改革が実現するかどうかは別にしても、根本的な大戦略の問題が未解決のままである」と警告しており、台湾軍参謀総長を務めて2019年に退役した李喜明元大将は「中国軍相手に空軍力や海軍力で対抗することを放棄し、侵攻してきた敵の脆弱な部分を叩く能力の構築」を提唱して「総合防衛構想」を立案、これをベースに台湾軍は対称戦略から非対称戦略に転換するはずだったのだが、李大将が退役すると非対称戦略への転換は白紙化されてしまったらしい。

台湾軍の問題点、伝統的な概念に回帰しているだけで大戦略が未解決

出典:Cpl Madis Veltman EST Army/CC BY 2.0

FT紙の取材に応じた李元大将は「分散的な指揮権限の下でゲリラ戦に特化した領土防衛軍の創設を訴えてきたが、今回の計画を見る限り非対称戦略の概念を採用したくないのがよく分かる。これはウクライナやバルト三国の例を受け入れたくないという意思の現れだ」と指摘、別の退役将官も「現在の台湾軍は伝統的な概念=2008年以前の状態(兵力削減前)に回帰しているだけで、新しい戦略を国民に明確に伝える努力もなく盲目的に働き続けているに過ぎない」と述べている。

この問題に精通した関係者は「蔡総統が徴兵改革を発表したタイミングで台湾を訪問した米国代表団も同様の欠陥を把握、台湾軍は戦術レベルにおいて熟練しているものの戦略的思考に欠けている」と述べたらしく、台湾メディアもFT紙の報道を引用して「台湾軍は旧概念に基いて動いている」と報じており、通信ネットーワークの発達で指揮権や戦力の分散化が可能になった現代戦において「分散の概念」は抵抗力の生存性や抗堪性を担保するのに重要で、もし台湾軍がこれを軽視しているなら中国軍にとって嬉しい話だろう。

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※アイキャッチ画像の出典:總統府/CC BY 2.0

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