無人機の迎撃コスト問題、ゲパルトのようなレーダーと連動した対空砲が必要

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ウクライナ軍は1日と2日に侵入してきた84機の無人機を全て撃墜することに成功、しかしアナリスト達は「無人機を迎撃するコストが見合わないなので、攻撃手段と防御手段の不均衡が長く続けば西側諸国の負担になる」と警告している。

Shahed-131/136の迎撃に活躍するNASAMS、但し攻撃手段と防御手段のコストが見合わない

ロシア軍が黒海やクリミアから発射するShahed-131/136はドニエプル川に沿ってウクライナ中央部に向かうことが多く、侵入コースが判明している無人機を「なぜドニエプル川の上空で撃墜しないのか?」と問われたウクライナ空軍は「無人機の接近を知る方法が音しかないからだ」と主張した。

無人機の迎撃コスト問題、ゲパルトのようなレーダーと連動した対空砲が必要

出典:Twitter経由 撃墜されたShahed-131/136

空軍の報道官は「目標に向かう無人機が視覚的に捕捉されることを防ぐためロシア軍は夜間にShahed-131/136を発射し、ドニエプル川に沿って非常に低い高度で移動するためレーダーで検出するのが難しく、我々は無地機の作動音でしか脅威を発見することができない。しかも音を頼りに目標を追尾するのは想像以上に大変で、市民からの通報があっても目標は時速150km/hで移動するため我々が到着する前に何処かへ飛び去ってしまうんだ」と述べたが、新年の1日と2日に侵入してきた84機のShahed-131/136を空軍は全機撃墜している。

ロシア軍は戦術を変更してShahed-131/136による攻撃を日中から夜間に変更、そのためウクライナ軍はMANPADSによる対処が難しくなったものの拠点防空と配備されたNASAMSが機能し、Shahed-131/136の迎撃に効果を発揮しているらしい。

無人機の迎撃コスト問題、ゲパルトのようなレーダーと連動した対空砲が必要

出典:Soldatnytt/CC BY 2.0 NASAMSランチャー

NASAMSはAIM-120を搭載するランチャー、目標を検出・追尾するためのAN/MPQ-64(もしくはGhostEye)、これを制御するためのFire Distribution Center、弾薬を補充するための補給車両の4つで構成され、第三世代のNASAMS向けに開発されたAIM-120の射程延長版「AMRAAM-ER(AIM-120C-8のシーカーとノルウェー企業のナーモが新規に開発したロケットモーターを組み合わたもの)」はAIM-120C-7と比較して交戦距離と交戦高度が50%以上拡張されている。

さらに第三世代のNASAMSランチャーはAMRAAM-ERに加え、AIM-9XやIRIS-Tといった特性の異なる空対空ミサイルを混載運用することも可能で柔軟性の高いマルチミサイルランチャー化しているのが特徴だが、ウクライナ提供分のNASAMSが「AMRAAM-ERを使用できるタイプ(第三世代)なのか」「1基のシステムにランチャーが幾つ含まれているのか」などは不明で、米国は計8基のNASAMSを提供すると発表しているものの現時点で引き渡されたのは2基に過ぎない。

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そもそもNASAMSは米軍備蓄にある装備ではなく、残り6基は昨年11月30日にレイセオンと製造契約を締結(契約完了期日は2025年11月28日)したばかりなので引き渡しは当分先の話だが、ウクライナ軍曰く「NASAMSランチャーに迎撃弾(AIM-120)を再装填する暇がないほど迎撃作業が忙しい」と表現しており、ロシア軍が1度の攻撃に投入するShahed-131/136の数を増やすか、侵入コースを変更するか、NASAMSが配備されていない都市やインフラに目標を変更すれば防空シールドを貫通しやすくなるのは明白だ。

ウクライナ空軍の報道官も「これだけ敵の攻撃が激しくなるともっと多くの対空兵器が必要になる」と指摘しているが、米国のアナリスト達は「2万ドルの無人機を迎撃するコストは50万ドル(NASAMSで使用するAIM-120のコスト/S-300で使用する迎撃弾は14万ドルらしい)で、これを運用するための努力をどこまで維持できるだろうか?」と指摘しており、攻撃手段と防御手段の不均衡が長く続けばウクライナ支援コストが西側諸国の負担になると警告している。

攻撃手段と防御手段の不均衡は「Shahed-131/136の射点や保管庫を攻撃できる手段の欠如」も影響を与えている

ウクライナ軍は1月3日時点で「500機以上のイラン製無人機を撃墜している」と明かしており、10月10日以降の約3ヶ月間に使用されたShahed-131/136の数を600機(目標に着弾した数含めた数字)だと仮定し、この攻撃ペースが2023年も維持されると「ウクライナ軍は約2,400機(この数字はロシアがイランに発注したとゼレンスキー大統領が言及したShahed-131/136の数と一致する)のShahed-131/136と交戦するための対空兵器が必要になる」という意味で、これとは別に巡航ミサイルと交戦するための対空兵器も必要になる。

無人機の迎撃コスト問題、ゲパルトのようなレーダーと連動した対空砲が必要

出典:Raytheon NASAMSランチャー

ウクライナ軍は迎撃率を高めるため「1発の巡航ミサイルに対して2発の迎撃弾を使用している」と明かしており、無人機にも同じアプローチを使用していれば必要になる迎撃弾の数は飛躍的に増え、仮に2,400機の20%をNASAMSで対応すると480発(1発対応)~960発(2発対応)ものAIM-120が必要になる計算だ。

ゲパルトのようなレーダーと連動した対空砲がイラン製無人機の大半を撃墜してくれれば攻撃手段と防御手段の不均衡是正に希望を見いだせるのだが、有効射程が約4kmのゲパルト(50輌提供予定)で守れる範囲は限られており、この手の対空兵器を大量にウクライナへ提供しないとアナリスト達の懸念は的中してしまう。

無人機の迎撃コスト問題、ゲパルトのようなレーダーと連動した対空砲が必要

出典:Hans-Hermann Bühling/CC BY-SA 3.0

因みに2,400機のShahed-131/136を達するコストは4,800万ドル/62億円に過ぎず、仮に全てをAIM-120で撃墜するなら12億ドル/1,560億円(NYT紙の取材に応じたアナリスト言及の50万ドルで計算/2020年度の調達実績は109万ドル)、スティンガーで迎撃するなら11.5億ドル/1,500億円(米陸軍が昨年5月に1,300発を6.24億ドルで発注)、PAC-3MSE弾で迎撃するなら117.6億ドル/1.5兆円(2020年度の調達実績490万ドル)もの費用が必要になる。

ゲパルトが使用する35mm弾の調達コストは不明だが、Rheinmetallはウクライナ軍の需要に対応するためスペインの弾薬企業「Expal Systems」を昨年11月に約12億ユーロで買収、これでRheinmetallの砲弾生産量は年間40万発(Expal Systemsが25万発~30万発)に拡大しており、ゲパルト向けの35mm弾もExpal Systemsで生産する可能性があるらしい。

だらだら調べながら書いたので話が長くなってしまったが、攻撃手段と防御手段の不均衡は「安価な迎撃手段の欠如」だけでなく「Shahed-131/136の射点や保管庫を攻撃できる手段の欠如」にも起因しており、米欧州陸軍のマーク・ハートリング元司令官が述べていたように最終的に戦争を勝利に導くのは「防御」ではなく「攻撃」で、特に物量で自国を上回るような敵国と対峙する場合「攻撃手段の対称性」を無視すれば一方的に殴られてジリ貧になるだけだ。

米空軍の装備調達コストは?F-35Aは92億円、F-15EXは107億円、KC-46は187億円
米海軍の装備調達コストは?SM-6は3.3億円、F-35Cは107億円、イージス艦は1,560億円
米陸軍の装備調達コストは?M1A2Cは11.5億円、AH–64Eは16.3億円、AMPVは4.2億円
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※アイキャッチ画像の出典:dalکاخ/CC BY-SA 4.0

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