ウクライナ東部バフムトで発言するロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏=5月25日に関連会社コンコルドが通信アプリ「テレグラム」に投稿した動画より(AFP時事)
ロシアの民間軍事会社ワグネルによるウクライナ東部ドネツク州バフムトの「完全制圧」宣言後、帰国した創設者プリゴジン氏が地方行脚を始め、連日のように記者会見を開いている。
「プーチン大統領のシェフ」の異名を取るプリゴジン氏を巡っては、「政治的野心」があるのではないかとの見方が強まっている。
ワグネル戦闘員は5月25日にバフムトから撤退を開始した。独立系メディアによると、これと並行してプリゴジン氏は30、31の両日、中部エカテリンブルクや極東ウラジオストク、シベリアのノボシビルスクを回って記者会見を開いた。
同氏は、ロシア軍のウクライナ侵攻について「東部ドンバス地方解放に2年、首都キーウ(キエフ)到達に3~4年かかる」と長期化を予想。その上で「総動員令の早期発出」「(凍結中の)死刑執行の復活」「計画経済の導入」などが喫緊の課題だと訴えた。
特に死刑に関し「戦時の犯罪には厳罰が必要だ」「(これに極刑を科したソ連の独裁者)スターリンは正しかった」と持論を展開。バフムトで元受刑者を含むワグネル戦闘員約2万人が戦死したと明らかにしたプリゴジン氏は、人命軽視の姿勢を問題視されており、総動員の主張は批判を集めそうだ。
ただ、主戦論を掲げる保守派の一部から支持されており、プリゴジン氏はSNSによる過激な内容の情報発信を通じ、影響力の保持を試みている。政権に従順な左派政党「公正ロシア」の乗っ取りを画策中と伝えられたこともある。
プリゴジン氏は、自身の地方行脚について「政治のキャリア始動と見なしてはならない」「大統領選出馬はない」と説明。一方で「ワグネルの第2戦線」と銘打った新たな活動を示唆し、政治的野心が警戒されている。