石破首相の関税交渉発言に藤井聡氏が警鐘 「史上最大の失言になり得る」

元内閣官房参与で京都大学大学院教授の藤井聡氏(56)が、石破茂首相による日米間の関税交渉に関する発言について、歴史上最大級の失言になり得るとの見解を示しました。藤井氏は12日に放送されたABCテレビの番組「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」に出演し、首相の発言が持つ外交的な危険性について詳しく解説しました。

石破首相は今月9日、千葉県船橋市内での参院選に向けた街頭演説で、今後の米国との関税交渉について言及しました。「国益をかけた戦いだ。なめられてたまるか。たとえ同盟国であっても正々堂々言わなければならない」と述べ、日本の立場を毅然と主張する姿勢を強調しました。

日米関税交渉に関する発言が報じられた石破茂首相日米関税交渉に関する発言が報じられた石破茂首相

藤井氏は、この石破首相の発言に「驚愕した」と語り、「歴史上最大の失言になり得る言葉」だと指摘しました。その理由として、「なめられてたまるか」という日本語のフレーズが、外交の舞台では非常に強く、攻撃的な意味合いに翻訳されかねないことを挙げました。

「なめられてたまるか」の外交的解釈

藤井氏によれば、「なめる」は「侮辱する」、「たまるか」は「耐えられない」「許さない」という意味に解釈できます。したがって、「なめられてたまるか」は英語に直訳されると、「トランプよ、お前は私を侮辱している。その侮辱は絶対に許さない」といった、相手を強く非難し、対決姿勢を鮮明にするメッセージになり得ると分析しました。

「戦い」と「ディール」の違い

さらに石破首相が交渉を「戦い」と表現したことについても、藤井氏は懸念を示しました。トランプ前大統領が重視するのは「ディール(取引)」であり、これは相手の立場や事情を考慮しつつ落としどころを探る交渉スタイルです。対して「戦い」は、相手を打ち負かす、つぶすという行為を連想させるとし、言葉の選択が両者のスタンスの根本的な違いを際立たせてしまうと解説しました。字義通りに翻訳された場合、米国側が報復措置として30%や40%といった高い関税率を課してきてもおかしくない、と藤井氏は厳しい見方を示しました。

街頭演説での発言の重みと外務省の対応

また、この発言が密室ではなく街頭演説という公の場で行われたことの重要性も指摘しました。国民に向けた発言は、翻訳の仕方によっては相手国への「宣戦布告」と受け取られかねず、外務省がこの発言を受けて「めちゃくちゃ焦ったらしい」と藤井氏は伝えました。

しかし、外務省が懸命に翻訳を調整した結果、ロイター通信などで配信された英文記事では非常に穏やかな表現に抑えられたと説明しました。藤井氏は、「ものすごくぬるく訳してくれたので、これはトランプが気付かない可能性はあります」と述べ、外交当局の努力によって最悪の事態は回避されるかもしれないとの見通しを示しました。

藤井氏は、石破首相の「なめられてたまるか」発言が、国内向けの強い姿勢を示す意図であったとしても、国際的な文脈では深刻な誤解や摩擦を生むリスクを孕んでいると改めて警鐘を鳴らしました。今後の日米通商交渉において、言葉選びがいかに重要であるかを浮き彫りにする発言となりました。