
首脳会談前、マクロン仏大統領(左)と握手を交わす岸田文雄首相=広島市南区で2023年5月19日午前9時23分(代表撮影)
北大西洋条約機構(NATO)が東京に連絡事務所を開設する計画について、有力加盟国のフランスが反対している。事務所の開設には、中国の軍事的な台頭を念頭に日本などアジア太平洋地域との連携を強める狙いがあるが、フランスが拒み続ければ計画は中止となる可能性がある。
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英紙フィナンシャル・タイムズは5日、マクロン仏大統領が、NATOが北大西洋地域を越えて影響力を拡大することは「大きな間違い」と述べ、事務所開設に反対していると報じた。また、AFP通信によると、仏当局者は6日、「NATOの規約は明らかに北大西洋に範囲を限定している」として、東京に連絡事務所を設ける必要はないとする見解を示した。中国を過度に刺激し、緊張が高まるのを懸念しているとみられる。
事務所開設は、NATOの意思決定機関・北大西洋理事会が全会一致で承認する必要があり、フランスが反対すれば実現できない。
NATOは、昨年採択した新たな「戦略概念」で中国を「体制上の挑戦」と位置付け、アジア太平洋の国々との連携強化を図っている。一方、マクロン氏は今年4月上旬に中国を訪れて習近平国家主席と会談し、経済協力の強化などで一致。その際、仏紙などのインタビューに対し、台湾問題で米中いずれにも「追随」すべきではないと主張し、国内外で物議を醸した。【ブリュッセル岩佐淳士】