ソウル都心、多国籍デモの新たな拠点に:国際化の進展と表現の自由を求める声

ソウル市内で最近、外国籍住民によるデモ活動が相次ぎ、国際社会が注目する現象が起きています。自国の政治・社会問題への関心を韓国社会に訴えかけるこれらの動きは、ソウルの急速な国際化とグローバル都市としての地位を象徴しています。本記事では、ソウル都心で繰り広げられる多国籍デモの現状と、その背景にある社会的・国際的な意味合いを探ります。

7月27日午前、ソウル市鍾路区の普信閣前には、500人を超えるカンボジア人が集結し、タイとの国境紛争におけるタイ軍の行動を糾弾するデモを行いました。彼らが掲げたプラカードには、カンボジア語ではなく「タイが先に攻撃しました」「侵略を直ちに中止せよ!」といったハングルが書かれていました。これは、本国の状況を韓国社会に広く知らせることを意図したものです。

2025年7月27日、ソウル普信閣前でタイとの国境紛争を訴えるカンボジア人デモ。ハングルで書かれたプラカードと太極旗が見える。2025年7月27日、ソウル普信閣前でタイとの国境紛争を訴えるカンボジア人デモ。ハングルで書かれたプラカードと太極旗が見える。

同日午後には、鍾路から約2キロ離れた恵化駅前で、約300人のフィリピン人がデモを実施。フィリピンの国旗とロドリゴ・ドゥテルテ元大統領の肖像画を手に、韓国語で「ドゥテルテを釈放せよ」と訴えました。参加者の一人は「混乱したフィリピンの状況を韓国人に知ってほしい」と述べ、韓国を自国の問題発信の場として捉えていることが伺えます。

国際都市ソウルが引き寄せる「外国人の声」

ソウルが外国人の「国際デモ舞台」と化している背景には、多国籍企業や国際機関が集中し、急速な国際化が進む同市の現状があります。昨年、韓国に滞在した外国人の数は約265万人に達し、韓国人の人口の5.2%を占めます。これは過去10年間で1.5倍に増加した数値であり、日本の外国籍人口比率(約3%)と比較しても倍近い割合です。このような国際化の進展が、外国人が自国の問題を世界にアピールする公論の場としてソウルを位置付ける要因となっています。

グローバル都市としての地位確立と「表現の窓口」

日本の都市開発調査機関である森記念財団が毎年発表する都市総合力ランキング(GPCI)において、ソウルは昨年、堂々たる世界6位に輝きました。全北大学社会学科のソル・ドンフン教授は、この結果を受け、「世界が注目するソウルは、各国に情報を拡散していく主要ハブと化している」と指摘。特に、「表現の自由が与えられてこなかった国家からやって来た外国人にとって、発言できる窓口となっている」と、その国際的な役割の重要性を強調します。

具体的な事例として、先月20日にはソウル市竜山区の戦争記念館前で、約600人のミャンマー人が軍部を糾弾するデモを行い、ソウル駅や市庁を経て鐘閣まで約4.5キロを行進しました。彼らは「軍部は退け、主権は国民に」といったスローガンをハングルで叫びました。また同時刻、市庁前のソウル広場では、気功集団・法輪功の学習者1200人余りが中国共産党による迫害中止を求めるデモを実施し、参加者の約3分の1が中国人でした。中国人参加者のファン・シャオミンさん(55)は、「表現の統制が強い中国では、このようなデモは想像すらできない。韓国でも母国のために声を上げたかった」と語り、ソウルが彼らにとって貴重な発言の場となっていることを示しました。米国からの旅行者ジョン・オリバーさん(37)は、これらの光景を目の当たりにし、「すでにソウルはパリやロンドンに劣らない国際都市」と評価しています。

ソウル都心で増加する外国籍住民によるデモは、単なる社会現象に留まらず、ソウルがグローバルな情報発信地として、また表現の自由を求める人々にとっての重要なプラットフォームへと変貌していることを明確に示しています。これは、急速な国際化を遂げたソウルが、国際社会における自身の役割を拡大している証拠と言えるでしょう。

参考文献

  • Yahoo!ニュース (朝鮮日報日本語版) 「ソウル都心が多国籍デモの舞台に…「めちゃくちゃになった祖国の状況を知らせたい」」 (2025年8月18日)