“周りは敵ばかり” 自分を優先する中国社会と中国人の生き方


渋滞に見る“自分優先主義”

“周りは敵ばかり” 自分を優先する中国社会と中国人の生き方

FNNプライムオンライン

なぜ交差点にまで車を入れるのかを友人に聞いたところ「行けるときに行っておかないと損をするからだ」という。確かに中国の交差点は、方向が同じだからといって信号機の色が同じとは限らない。赤と青が交互に来る日本と違うので、信号待ちの時間は日本より長いところが多い。礼儀正しく待つよりも「行けるところまで行く」の気持ちはわからないでもない。

信号待ちに限らず、北京の交通事情は先に入った方が優先で、車両同士が譲り合う光景はほとんど見ない。感覚的には、ほかの車両を優先させていると自分はいつまでたっても前に進めない。つまり自分を優先させることが求められる。

交通事情が全てとは言わないが、確かに中国は「厳しい競争社会」(中国筋)である。政策が突然変わることもあれば、コロナ禍でのロックダウンのように自由が制限されることもある。仕事や生活環境は簡単に影響を受けるし、補償金などの話はほとんど聞かず、あてにする人も少ない。「自分の身は自分で守る」が基本なのである。

上海で焼き鳥屋を営む友人はコロナ禍の際、「いつ何があるかわからないので休めない」とこぼしていた。一概には比べられないが、中国にいると日本は人に優しい社会だとつくづく思う。

それを踏まえれば、中国の貧富の格差は当然の結果とも言える。14億人の競争は熾烈だし、急激な環境の変化に備え、自分の利益を追求、確保するのは当たり前だからだ。金持ちにはより金が集まり、貧しい人は浮上する余地がさらになくなる。問題は貧富の格差だけでなく、「格差が固定化していること」だと以前から言われている。

また、政治に参画できないことは「公」の意識を希薄にさせる。寄付の文化はほとんどない。高齢者や子供に優しい習慣があることに少しの安心を覚えるが、家族や親しい友人などの「味方」以外は、基本的に「敵」だという考え方なのだろう。中国の友人に「残りものには福がある」という日本のことわざを教えたところ、「中国では残りものを待っても意味がない。なくなるだけだ」と言われた。自分勝手という印象もある中国人だが、言い方を変えれば生き残るために必死なのだろう。



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