大阪南部の「金剛バス」廃止 40万人の交通手段いまだ不透明

金剛バス

今年の12月20日、大阪府富田林市の金剛自動車が同市と太子町、河南町、千早赤阪村で運行している路線バス「金剛バス」が廃止されることが決まりました。この突然の発表により、関係する4市町村は廃止後の代替交通手段を検討し始めました。15路線の内、利用者が多い5路線の維持を目指すことは合意が得られましたが、その他の路線についてはまだ不透明です。年間利用者数はなんと40万人以上もいます。これらの人々の不安が解消されるかどうかが今後の焦点です。

背景にある運転手不足の深刻な影響

「金剛バス」の廃止の背景には、バス運転手の深刻な人手不足があります。日本バス協会の予測によれば、2024年には全国で2万1000人の運転手が不足し、30年にはさらに3万6000人が不足する見込みです。

金剛自動車の白江暢孝社長も、運転手不足を廃止の理由の一つとして挙げています。運転手の労働時間の規制が厳しくなる「2024年問題」に対応するため、これ以上の路線バス事業の継続は困難であることを理解してもらいたいと求めています。この問題は周辺地域にとどまらず、阪急バスも大阪市や豊中市などの府内と兵庫県内を走る4路線を運転手不足を理由に11月に廃止すると発表し、都市部にも影響が広がっています。

代替交通手段の確保に対する課題

4市町村は金剛バスの廃止後の代替交通手段として、近鉄バスや南海バスに協力を依頼しましたが、運転手不足という厳しい状況は彼らにも共通しています。そのため、これらのバス事業者は経費負担を自治体側に求め、自治体が事業主体となり、交通事業者が輸送契約を請け負う形で協力することを条件にしています。

この方式を採用した場合、自治体の負担はどのくらいになるのでしょうか。維持を目指す5路線の一つである河南町南部エリアの「さくら坂循環線」について、協議会事務局が過去のデータをもとに試算した結果、運行経費は6580万円と見積もられています。

ただし、利用者数が14万人と同じくらいであれば、運賃収入を差し引いた2800万円が自治体の負担となります。利用者数が減れば負担は増加し、10万人で試算すると自治体の負担は3880万円まで増えます。金剛バスの利用者数の減少も廃止の原因となっており、路線が維持されても自治体の負担は年々重くなる可能性があります。

利用者の不安解消と代替交通手段の検討

ただし、移動手段が確保されれば、利用者の不安も解消されるでしょう。維持を目指す5路線は近鉄富田林駅などと各地域を結び、通勤や通学に利用されることが多いです。22年度の利用者数は5路線で約71万人に上り、金剛バス全体の利用者数(約110万人)の約65%を占めています。

問題は5路線以外の路線を利用している人々の交通手段をどう確保するかです。協議会では、路線バスだけでなく、自家用有償旅客運送や乗合タクシーなど、さまざまな代替交通手段の検討を行っています。河南町と太子町では既にコミュニティーバスを走らせており、その利用範囲を広げることも検討されています。

地域交通論の近畿大学教授である高橋愛典氏は、「地元の人々の声を聞き、地域で選択できる政策をフル活用することが重要です。金剛バスの沿線の4市町村が協議会を設立したことから、自治体の枠を超えて、車なしでも移動できる街を共通の目標として考えていくことが重要です」と指摘しています。

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