衰える気配がないロシア軍のミサイル攻撃、6月の発射数は200発以上

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ロシア軍は5月にShahed-136や各種ミサイルを計593発もウクライナに撃ち込んだが、6月も5月に劣らないペースで攻撃が続いており、首都以外への攻撃が頻繁に迎撃シールドを貫通して被害が増加している。

ウクライナにパトリオットシステムを追加供給するタイミングを間違えれば「西側諸国の防空能力」に影響が出る

ロシア軍は5月にShahed-136を408機、極超音速ミサイル、弾道ミサイル、巡航ミサイルを185発も発射し、ウクライナ軍は飛来した593発の内523発(迎撃率88%)を撃ち落としたが、迎撃に失敗した70発が軍事施設や民間施設に着弾、ロケットの推進剤を生産していたドニプロペトロウシク州のパブログラード化学工場、フメリニツキー州にあった軍の弾薬庫、ストーム・シャドウを運用するSu-24が駐留(推定)するスタロコスティアンティニフ空軍基地なども被害を被っている。

ロシア軍によるウクライナへのミサイル攻撃(無人機を含む)
2022.09 Shahed-136×26機(24機)
各種ミサイル×5発(4発)
09月の総発射数×31
09月の総撃墜数×28
2022.10 Shahed-136×244機(236機)
各種ミサイル×230発(149発)
10月の総発射数×474
10月の総撃墜数×385
2022.11 Shahed-136×63機(62機)
各種ミサイル×184発(134発)
11月の総発射数×247
11月の総撃墜数×196
2022.12 Shahed-136×99機(94機)
各種ミサイル×261発(186発)
12月の総発射数×360
12月の総撃墜数×280
2023.01 Shahed-136×108機(108機)
各種ミサイル×96発(75発)
01月の総発射数×204
01月の総撃墜数×183
2023.02 Shahed-136×45機(40機)
各種ミサイル×142発(79発)
02月の総発射数×187
02月の総撃墜数×119
2023.03 Shahed-136×89機(71機)
各種ミサイル×79発(38発)
03月の総発射数×168
03月の総撃墜数×109
2023.04 Shahed-136×71機(60機)
各種ミサイル×23発(21発)
04月の総発射数×94
04月の総撃墜数×81
2023.05 Shahed-136×408機(369機)
各種ミサイル×185発(154発)
05月の総発射数×593
05月の総撃墜数×523
2023.06
01 イスカンデルM×7(7)、イスカンデルK×3(3)
発射数×10
撃墜数×10
02 Shahed-136×21(21)、Kh-101/Kh-555×15(15)
発射数×36
撃墜数×36
03 地元当局も現地メディアも「ドニプロ郊外に弾道ミサイルが着弾して20人が負傷とした」と発表しているが、ウクライナ空軍は攻撃の詳細を発表していない。 発射数×不明
撃墜数×0
04 Shahed-136×8(6)、Kh-101/Kh-555×6(4)、クロピヴニツキー近くの飛行場に巡航ミサイルが2発着弾
発射数×14
撃墜数×10
06 Kh-101/Kh-555×35(35)
発射数×35
撃墜数×35
08 Kalibr×2(0)、現地メディアはチェルカッスイ州に2発の巡航ミサイルが着弾して工場に被害が出たと報じている。
発射数×2
撃墜数×0
09 Shahed-136×16(10)、Kh-101/Kh-555×6(4) 発射数×22
撃墜数×14
10 Shahed-136×35(20)、地上発射型ミサイル×8(2)、イスカンデルM、イスカンデルK、Shahed-136がポルタヴァ州のミルゴロド空軍基地に着弾した。 発射数×43
撃墜数×22
11 Shahed-136×?(6)
発射数×ー
撃墜数×6
13 1回目:Shahed-136×4(1)、Kh-101/Kh-555×14(10)、2回目:Kh-101/Kh-555×1(1)、ドニプロペトロウシク州クリヴィー・リフに6発のミサイルが、ハルキウ州にShahed-136が着弾。 発射数×19
撃墜数×12
 14 Shahed-136×10(9)、Kalibr×4(3)、Kh-22×6(0)、Shahed-136がオデーサに、Kh-22がドネツク州のクラマトルスクとコンスタンチノフカに着弾。 発射数×20
撃墜数×12
 15 Shahed-136×20(20)、Kh-101/Kh-555×4(1)、クリヴィー・リフの産業施設に3発のミサイルが着弾
発射数×24
撃墜数×21
ロシア軍の総発射数:2,589発、ウクライナ軍の総迎撃数:2,077発

この傾向は6月も同じで、ロシア軍は15日にカスピ海上空のTu-95MSから4発のKh-101/555を、北と南から20機のShahed-136を発射し、ドニプロペトロウシク州のクリヴィー・リフに3発の巡航ミサイルが着弾、現地当局は「我々の防空システムが飛来したミサイルを1発破壊したが、ミサイルが工業団地に命中して産業施設に大きな被害が出ている」と述べており、空軍も「撃ち漏らしたKh-101/555がドニプロペトロウシク州の産業施設に命中した」と発表。

つまりクリヴィー・リフをカバーするウクライナ南部の防空システムは、巡航ミサイル4発の内1発しか撃ち落とせなかったという意味で、パトリオットシステムが配備されている首都と地方都市の防空能力には大きな格差が生じており、これまでウクライナのA2ADを担ってきたS-300やBukの迎撃弾が枯渇し始めているのかもしれない。

衰える気配がないロシア軍のミサイル攻撃、6月の発射数は200発以上

出典:Командування Повітряних Сил ЗСУ

因みにロシア軍は6月にShahed-136を120機、各種ミサイル(Kh-101/Kh-555、Kalibr、Kh-22、イスカンデルM、イスカンデルK)を105発もウクライナに撃ち込んでおり、これはウクライナ諜報機関が発表していたミサイル生産量の2ヶ月分に相当し、ウクライナ軍のイグナト報道官も「効果のない制裁のせいでロシアは必要な部品を入手し続けているためミサイル生産量が増えている」と述べている。

この問題について明るいニュースがあるとすればレイセオンの最高経営責任者が言及した「パトリオットシステムの増産」だろう。

衰える気配がないロシア軍のミサイル攻撃、6月の発射数は200発以上

出典:U.S. Army photo by Sgt. Alexandra Shea

ヘイズ最高経営責任者はWSJ紙に「パトリオットシステムの年間生産量を12基まで引き上げ、2024年末までに5基のパトリオットシステムをウクライナに引き渡す予定だ」と明かしており、レイセオンとロッキード・マーティンは同システムで使用される迎撃弾を増産するため工場の拡張を進めているらしい。

約4億ドルのパトリオットシステムはレーダー、管制システム、アンテナ、発電機、ランチャー(6輌~8輌)で構成され、ヘイズ最高経営責任者は「これに迎撃弾の取得費用を加えるとシステムの総額は10億ドル以上になる。これを欲しがる新規顧客は発注から納品まで2年以上待つ必要がある」とも付け加えており、ゼレンスキー大統領は「あらゆるロシアのミサイルを阻止できるのはパトリオットシステムだけで、これが50基あればロシアのミサイル攻撃で傷つく人はいなくなる」と述べて追加供給を訴えている。

衰える気配がないロシア軍のミサイル攻撃、6月の発射数は200発以上

出典:Photo by Sgt. 1st Class Jason Epperson

これまでに生産されたパトリオットシステムは240基程度なので、恐らくウクライナが追加のパトリオットシステムを入手するには「西側諸国の在庫」ではなく「生産ラインからの調達」しかなく、仮に今直ぐパトリオットシステムを大量に提供してもPAC-3弾の年間生産量は500発(2023年末までに550発に増加する予定)なので、ウクライナにパトリオットシステムを追加供給するタイミングを間違えれば「西側諸国の防空能力」に影響を及ぼすだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:Dmitry Terekhov/CC BY-SA 2.0

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