日韓財務対話が29日、東京で7年ぶりに再開される。両国政府は、金融危機時に外貨を融通する「日韓通貨交換(スワップ)協定」を再開する方向で最終調整に入った。岸田文雄政権は27日、輸出手続き上優遇する「グループA(旧ホワイト国)」に、韓国を再指定するための政令改正も閣議決定した。岸田首相と、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が日韓関係の正常化で合意したことを受けたようだが、両国には、島根県・竹島の不法占拠や、韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊哨戒機へのレーダー照射事件など放置できない問題が多々ある。気になるジョー・バイデン米大統領と、ラーム・エマニュエル駐日米国大使の発信。日本の主権・国益は守られているのか。ジャーナリストの室谷克実氏は、日本の最先端技術が危険にさらされかねない「日韓協力ムード」の危うさを暴いた。
日韓のマスコミには「日韓協力ムード」があふれている。日本の場合、岸田文雄政権が旗を振り、本質的にマゾヒスティックな「対韓屈従願望」を持つ、多くのマスコミが靡(なび)いているからだ。
しかし、ここに大きな問題がある。
日本人が思う「協力」と、韓国人が語る「協力」では、実態としての意味がまったく違うことだ。韓国政府や韓国企業が〝上位パートナー〟に対して語る「協力」とは、極言すれば「ただでもらうこと」「パクリできる仲になること」だ。
パクリ意欲に満ちた使節団を、日本が「おもてなしの心」で迎えていたら、過去の例なら半導体、最近の例なら高級果実のような大損失が待ち受けている。
韓国は、日本とは異なり「貿易立国」の路線を採り続けている。ところが、最大の儲け先だった中国との貿易が赤字に転換した。
米軍の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配置に始まる限韓令や、中国経済そのものの落ち込みもあるが、最大の問題は技術力だ。韓国で製造される工業製品は、中国でも生産できるようになった。その状況を突き抜ける、つまり「やはり韓国製でなければダメだ」と評価されるような製品は韓国には存在しない。
さらに半導体不況が韓国の「貿易立国」路線にブレーキをかけている。
前政権は「日本には2度と負けない」「いまや韓国は世界を先導する中枢国家になった」と豪語した。そして先端製品の素材、部品、製造装備を国産化すると力んでみた。もちろん政府予算も投入した。大本営発表は「順調な進展」だったが、いま点検すれば先端製品の素材、部品、製造装備の対日輸入額は微増している。
半導体に関しては、システム半導体もファンドリー部門もトップ国家との差が広がるばかりだ。
EU(欧州連合)の内燃機関車に対する厳しい環境基準を突破できる技術もない。水素部門、量子コンピューターの研究も遅々として進んでいない。
だから、いますぐカネを稼げる製品を製造できる技術、いずれ世界をリードする最先端技術を何としてでも手に入れたいのだ。
韓国の産業通商資源省は6月初旬、外部の専門家や経営者も招いて拡大対策会議を開いた。同省の公式ホームページには「韓米・韓日首脳順訪の後続措置として、先端技術協力の積極模索」とある。
韓国が、米国あるいは日本に提供できる先端技術が何かあるのか。ないのに「協力方策を積極的に模索」とは、パクリ意欲の表明としか理解できまい。
同省はかねて、「インドネシア産LNG(液化天然ガス)の日韓共同購入の協力」にも意欲を示している。
「簡単にできそうな協力だ」と考える向きもあろう。だが、日本は長期契約で比較的安価に購入している。スポット買いで負担が大きい韓国としては、日本の買値で入手することを夢想しているのだろうが、インドネシアが黙っているはずはない。
韓国の「対日協力攻勢」を〝純真な気持ち〟で受け止めていてはならない。
対中国、対北朝鮮の軍事協力は進めなければならない。しかし、他の部門の「協力」については、用心第一。「甘い策略」に乗る公務員、企業経営者、あるいは農協指導者が出ないことを願う。
■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に『悪韓論』(新潮新書)、『反日種族の常識』(飛鳥新社)、『呆韓論』(産経新聞出版)、『韓国のデマ戦法』(同)など多数。