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藤井聡太棋聖
将棋の第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負の第3局が7月3日、静岡県沼津市の「沼津御用邸東附属邸第1学問所」で行われ、藤井聡太棋聖（竜王、名人、王位、叡王、棋王、王将、20）が挑戦者の佐々木大地七段（28）に107手で勝利した。変幻自在の玉さばきと相手の力を封じるような完勝ぶりに、解説陣も「藤井棋聖が新しい扉開いた」と感嘆の声を上げていた。
【映像で見る】「藤井聡太棋聖が新しい扉開いた」棋聖戦第3局ハイライト
天を仰ぎ静かに投了を告げた佐々木七段は、すぐに「（8筋への玉寄りが）しびれていました」と藤井棋聖に声をかけた。直前まで勝負を繰り広げていた相手にすぐに感想を告げるほどの鮮烈な玉さばき。藤井棋聖が大胆な構想を見せつけ、完勝を飾った一局だった。
1勝1敗で迎えた第3局は、黒松林に囲まれた日本庭園が美しい沼津御用邸東附属邸第1学問所が舞台となった。先手番の藤井棋聖は、「角換わりにしようと思っていました」と得意戦型を志向。後手の佐々木七段は「面白いかなと思ってやってみました」と腰掛け銀から右玉に構える作戦をぶつけた。それを受けた藤井棋聖は「後手が右玉なので」と駒組段階で端に桂馬を跳ねて飛車を大回転する構想を披露。解説の屋敷伸之九段は「びっくりしましたね。研究範囲なのか…おもしろいですね」とコメントした。
難解な中盤戦では互いに持ち時間を投入。先手玉自ら前線に立つスリリングな手順も現れた。長い膠着状態を経て、佐々木七段が駒損をいとわない攻めを決断。本格的な戦いへと発展すると、藤井棋聖は玉の早逃げを選びするすると安全地帯へ。変幻自在な差し回しを見せると、形勢も藤井棋聖側に傾き出した。後手は飛車先の突破を目指したが、藤井棋聖は手厚い受けで優勢は揺るがない。ABEMAの「SHOGI AI」は藤井棋聖86％、佐々木七段14％ながら、受けの銀の一手を見て佐々木七段が投了を告げた。
一局を通して各所で現れた藤井棋聖の鮮烈な手順と構想力。一見危険な場所に飛び込むように見える8筋への玉寄りには、屋敷九段は「すごい手が出ましたね、また」、聞き手を務めた本田小百合女流三段は「これは何ですか！」と目を丸くし、視聴者からは「王様の大冒険」「こんなん見たことない」など驚きの声が多数寄せられていた。
プロをも驚嘆させる自由で常識にとらわれない、藤井棋聖の“魅せる”将棋。ともに解説を務めた門倉啓太五段は、「玉が不安定だったので決して自信があった訳ではないと思いますが、相手に攻めさせないように手渡ししながらじりじりとリードを奪った藤井棋聖の強さが際立った一局。何か“新しい扉”を開いてしまった気がします。玉さばきというのはすごく難しいものでそれに特化した棋士もいますが、ただでさえ将棋の強い藤井棋聖が、更なる特殊能力を身に着けたのかなと見えました。独壇場で『藤井劇場』を見たなという感じでした」とし、更なる進化に脱帽した様子だった。
終局後、大盤解説会場に姿を見せた藤井棋聖は「難しい将棋で中盤から攻められる展開になったが、辛抱強く指すことができたと思う」とあいさつ。同じく登壇した佐々木七段は「こんなに手がないのか、と大局観の差を感じた」とし、完敗を認めていた。
シリーズ成績は藤井棋聖の2勝1敗に。次局で若き七冠王が決着を付けるか、タイトル初挑戦の佐々木七段が先手番で再び追いつくか。注目の第4局は、新潟市の「高志の宿 高島屋」で指される。
（ABEMA／将棋チャンネルより）
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