江口寿史 撮影:冨田望
漫画家・イラストレーターとして活躍する江口寿史さんは、1977年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)の『すすめ!!パイレーツ』で連載デビュー後、80年代半ばからはイラストレーターとしても活躍。その斬新なポップセンスと独自の絵柄で漫画界に多大な影響を与え、40年以上も幅広いファンに支持され続けている。
東京日比谷の展覧会を終えた江口さんは、吉祥寺にある仕事場で「THE CHANGE」の取材に応じてくれたーー。
【第2回/全5回】
■【画像】お金がなくて原画を売却!? 子どものように無邪気に笑う江口寿史■
人気漫画家が経験した最大のピンチとは?
『すすめ!!パイレーツ』(集英社)で鮮烈な連載デビューを果たし、その後イラストレーターとしても活躍。若くして人気作家となり、順風満帆にも見える人生だが、「最大の危機」はどのような時だったのか。江口さんからは意外な答えが返ってきた。
「やっぱりお金がないのは危機ですよね。すごくお金がなくなった時期があった。それもそんなに昔の話ではなくて、2010年くらいのことなので、わりと最近なんですよ。お金がないっていうか、毎月の家のローンとか、仕事場の家賃とかを払うのが精一杯で、生活費が残らない状態。要するに自転車操業です。それで仕事場の家賃を何か月も待ってもらったりね。半年以上も滞納してしまったこともありました。そんな時期が5年くらい続いたんですよ」
日本のポップカルチャーを牽引し、国内外に多数のファンを抱える江口さんが家賃滞納とは俄かに信じがたいが、その当時の状況を包み隠さず語ってくれた。
「僕はデビューしてから、お金で苦労したことがなかったんです。とくにコミックスが出るようになってからはお金は自動的に入ってきて、お金はいつもそこにあるって感じだったんですよ。でも、ここに引っ越してきた頃は漫画も『キャラ者』(双葉社)しか描いてないし、たまにイラストの仕事をやるくらいで。イラストレーターとして絶対的な評価があったわけでもなかったですしね。その頃都内に自宅を建ててからジワジワとお金がなくなってきて、本当にお金がないっていう状況になった時に初めてお金の大切さに気付いたんです」