ロシアのプーチン大統領(古厩正樹撮影)
ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の反乱後、存在感を増したのが、ベラルーシのルカシェンコ大統領だ。ワグネル創設者、プリゴジン氏を保護し、自国に配備するロシアの核兵器についても「拒否権を持つ」と強気だ。ロシアのプーチン大統領との力関係が逆転したとの見方もある。
【ツーショット】「欧州最後の独裁者」と呼ばれるルカシェンコ氏とプーチン氏
「欧州最後の独裁者」と呼ばれるルカシェンコ氏は6日、プリゴジン氏が「ロシアにいる」と述べた。反乱の際にプリゴジン氏を説得したとされるルカシェンコ氏は当初、プリゴジン氏がベラルーシ国内にいると語っていた。
ロシア当局はプリゴジン氏の自宅を捜索し、豪華な応接間やジェットバス、ヘリポートや、銃、弾薬、札束、金塊、変装用のかつら、勲章などがある室内の様子を国営テレビに報じさせた。プーチン政権はプリゴジン氏の腐敗を強調して人気をおとしめる狙いだが、ルカシェンコ氏の仲介もあってか、プリゴジン氏は身柄を拘束されていない。
ルカシェンコ氏はまた、ロシアがベラルーシに配備する戦術核兵器について拒否権を持つとし、ロシアの言いなりにならないことを強調した。
筑波大学の中村逸郎名誉教授は「ルカシェンコ氏は反乱を収束させ、プーチン氏に対しても力をつけており、プリゴジン氏に自国とロシアの自由な往来を許していると考えられる。プーチン政権中枢にもプリゴジン氏の後ろ盾がいるとも推察され、『ポスト・プーチン』を画策している可能性もある」とみる。
ルカシェンコ政権では不穏な動きが相次いでいる。アブラメンコ運輸・交通相が4日に急死。昨年11月にはマケイ外相が旧ソ連6カ国の集団安全保障条約機構(CSTO)会合に出席後に急死した。
中村氏は「急死の背景は明確ではないが、現在のタイミングから、『ロシア離れ』を狙うルカシェンコ氏自身が『ロシアに近い人物』を狙ったという可能性もゼロではない」と指摘した。