市川猿之助容疑者
母親に対する自殺幇助(ほうじょ)容疑で逮捕された歌舞伎俳優、市川猿之助(本名・喜熨斗孝彦)容疑者(47)が18日、父親に対する同容疑で警視庁捜査1課に再逮捕された。父親の死をめぐっては当初、殺人容疑の適用も取り沙汰され、芸能界追放も見込まれた。しかし両親ともに自殺幇助容疑ということで量刑で執行猶予となる可能性もあり、一転、役者復帰の道も見えてきそうだ。
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猿之助容疑者は5月17~18日、東京都内の自宅で、父親で歌舞伎俳優、市川段四郎(本名・喜熨斗弘之)さん=当時(76)=の自殺を手助けし死亡させたとされる。
司法解剖の結果、段四郎さんと母親の延子さん=同(75)=の死因は向精神薬中毒の疑いと判明。猿之助容疑者が過去に処方された睡眠導入作用がある薬2種類の成分が検出され、致死量に近い量を服用していた。
猿之助容疑者は逮捕後、「両親の自殺を助けたことに間違いない」と供述。両親の遺書がない中、警視庁捜査1課は介護が必要だった段四郎さんが自殺の意志を明確に示せたかなど慎重に捜査を進めてきたが、当時の状況と事情を知る猿之助容疑者の供述に矛盾はないと判断した。
猿之助容疑者自身も薬を服用し、自殺を図ったとみられる。任意聴取には「両親が睡眠薬を飲んで寝たところでポリ袋をかぶせ、養生テープでとめた」と説明していたが、解剖結果では両親に袋をかぶせたことによる窒息死の所見は確認されなかった。
猿之助容疑者をめぐっては一部週刊誌が性加害やハラスメント疑惑を報道。逮捕後に「私に関する記事が週刊誌に掲載されることを両親に話したところ、家族3人で次の世界に行こうとなった」などと供述していた。
今回の再逮捕について、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「警察が母親と父親に対する容疑を分けて2段構えで捜査した背景には、要介護で寝たきりだった父親が自殺する意志を本当に示せたのか、むしろ猿之助容疑者と母親が『残していくのはかわいそう』だと無理心中を図ったのではないかという疑いを強く持っていたことがうかがえる。相当に調べたと思うが結局は猿之助容疑者の供述を覆すには至らなかったということだろう」としたうえで、量刑については「懲役3年程度に執行猶予がつくのではないか」と見通した。
実刑ならば歌舞伎界からの永久追放もあり得たが、執行猶予の可能性が出てきたことで一転、復帰の道もみえてきた。舞台関係者は話す。
「客を呼べる存在として、歌舞伎界に貢献してきたことは言うまでもありません。本人の意志にもよりますが、執行猶予ならば、俳優として復帰させるか、裏方として舞台にかかわる形を取るか。いずれにしても歌舞伎界が放っておくことはないでしょう」