「名作が古典になっていく、過渡期にある」 あの戦争が遠くなるなかで、『はだしのゲン』を読む #戦争の記憶

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(写真:キンマサタカ、図版作成:桂山未知)

戦争について自分の言葉で話すためにも読んだほうがいい 石山蓮華(俳優、ラジオパーソナリティー)

「名作が古典になっていく、過渡期にある」 あの戦争が遠くなるなかで、『はだしのゲン』を読む #戦争の記憶

いしやま・れんげ/1992年、埼玉県生まれ。俳優、ラジオパーソナリティー、文筆家。著書に『犬もどき読書日記』『電線の恋人』。2023年4月からTBSラジオ「こねくと」(毎週月~木曜、午後1時から)のメインパーソナリティーを務める

『はだしのゲン』は、子どもの頃にパラパラッとめくったことはあります。でも、原爆投下直後の絵があまりに恐ろしくて、読まなかったんです。ゲンが「みんなおばけじゃ~」と叫びますが、全身の皮膚が原爆の熱線で溶けて垂れ下がっている人々の姿はやっぱり怖いです。

今回も重い気持ちでページをめくり始めたんですが、ひどい状況にあってもへこたれないゲンの明るさとユーモア、ハチャメチャな暴言と腕っぷしの強さは、救いだと思いました。令和の今読むと、トラブルを暴力で解決するのは容認できないけれど、この物語の中では、極限状態を生き抜くために、主人公がけんかに強いことが大事な条件だった。

祖母の言葉とゲンの喜びがつながった

「名作が古典になっていく、過渡期にある」 あの戦争が遠くなるなかで、『はだしのゲン』を読む #戦争の記憶

原爆投下直後、ゲンが自宅へ急ぐと、父と姉、弟が崩れた家の下敷きになっており、ゲンの目の前で焼け死んでしまう(漫画『はだしのゲン』より)

意外だったのは、ゲンがよく笑うことですね。つらいからこそ笑うようにしていたのかなとも思います。ゲンは常に気丈に振る舞っているけれど、原爆で家族を目の前で失うという凄惨な体験をして、心のどこかが麻痺して壊れているのかもと感じました。

特に印象に残ったのは食事のシーンでした。「夢じゃないかのう こんなめしをくえるなんて」。腹をすかせたゲンが、白いごはんを前にして言うせりふです。

91歳になる私の祖母は、戦争中に栃木へ疎開した経験があり、毎日ひもじくて、芋の根っこも食べたそうです。戦争のことはあまり話そうとしませんが、「食べ物を大事にしなさい」と口酸っぱく言われました。祖母の言葉と、ゲンの「白いごはんだ」という喜びがつながった気がしました。あの時代と今の暮らしは地続きなんです。

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