「空軍力で不利」のウクライナとの戦い、秋の雨期まで反撃を遅らせる戦略…ウクライナの反撃にさらなる悪材料
ウクライナ軍が南部戦線でロシア軍の防衛線を一部突破し、これに対しロシア軍が北東部戦線で攻勢を強めています。これはウクライナ軍の南部への集中を誘導するための戦術です。ロシア軍は東部と南部に兵力を分散させるリスクを冒してまでこのような作戦を取ったため、ウクライナの反撃作戦には困難が生じる恐れがあるとの指摘もあります。
攻勢強めるロシア軍、クピャンスクとリマン周辺に集中兵力
AP通信によれば、ロシア軍はウクライナ北東部のハルキウ州のクピャンスクとドネツク州北部のリマン周辺に兵力10万人を集中させており、約1年前にウクライナ軍に奪われた地域の再奪還作戦を展開していると報じられています。ロシア軍の攻撃は7月中旬から徐々に激化し、最近では積極的な進撃を試みています。ウクライナ砲兵部隊の指揮官、ビクトール・ユルチュク氏は「敵軍が引き続き進撃を試みているため、戦闘が絶えず、早期に収まる兆しもない」と述べています。
ウクライナ軍も反撃に注力、ロシア軍が北東部に集中
ウクライナ地上軍のオレクサンドル・シルスキー司令官は、ロシア軍がクピャンスクとリマン周辺の兵力を再編成している一方、新規に編成された旅団と師団も投入されていると分析しています。ハンナ・マリャル国防次官によれば、ロシア軍は東部ドネツク州の主要交戦地域であったアウディーイウカに留まっていた空輸部隊まで、両地域の戦闘に投入したとのことです。
AP通信によれば、ロシア軍が南部で強力な反撃を受けている状況にもかかわらず、北東部地域の攻撃に集中させるのは、ウクライナ軍兵力の分散を狙った戦術だとの分析があります。現在、ウクライナ軍はザポリージャ州オリヒウ周辺に兵力を集中させ、アゾフ海まで進撃し、東部ドンバスと南部黒海沿岸のロシア軍を分断する作戦を展開しています。ウクライナ軍は最近、同地域の一部でロシア軍の第1防衛線を突破しました。このような状況で北東部地域の戦闘が激化したため、ウクライナ軍もこの地域でロシアの攻撃に対抗する作戦を本格的に検討し始めました。
ロシア軍の戦術は時間稼ぎを狙ったもの?
英国防省は公開した戦争状況分析資料で、ロシア軍が(ザポリージャ州オリヒウで)ウクライナ軍の反撃を阻止する一方、クピャンスク周辺の北部戦線で一定の戦果を挙げていると述べており、「北部戦線軸に引き続き資源を集中させ、このような戦果を活用する可能性が高い」と分析しています。しかし、このような戦術はロシア軍の兵力を二分するリスクも伴うと指摘されています。現在、ロシア軍は東部ドンバス北部から南部ザポリージャ、ヘルソンまでの約1200キロメートルの戦線でウクライナ軍の反撃に対抗しています。
ロシア軍が南部と東北部の主要戦闘地域を分けようとするのは、時間稼ぎのためだとの分析もあります。ウクライナ軍を東北部に誘導することで、南部で新たな防衛陣地を築く時間を稼ぎながら、秋までウクライナ軍の反撃作戦を遅らせようとしているのです。ウクライナでは秋に雨が多く、地面がぬかるむため、歩兵と機甲部隊の進撃は困難になる可能性が高いです。ウクライナ軍は兵力不足と空軍力の劣勢に加えて、気象条件とも戦わなければならない状況に徐々に追い込まれていると指摘されています。
シン・ギソプ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)