所有者の分からない農地が日本の全耕地面積の4分の1を占めている現実に、食料・農業・農村基本法の見直しが進んでいます。そんな中、農地を巡る様々な問題が各地で浮かび上がっています。
ある男性は、標高1000メートル級の山間地に位置する中国地方で、所有者不明の田50アールを引き受けました。この田は、長年放置されていたもので、死亡した農家の親族が相続放棄したため、誰も管理する者がいなかったのです。男性は22年前に農業法人を設立し、地域の担い手となってきた経験を持ち、この所有者不明農地を「現代の闇小作」と表現しました。
煩雑な手続き「最速で1年」
男性がこの所有者不明農地を引き受ける際には、手続きに多くの困難が伴いました。まず、死亡した農家の借金が未払いのまま残っていたため、相続放棄の確認を裁判所に求めるなど、農地法上の手続きが必要でした。農業委員会の職員からは、「所有者不明農地に当たるため、最短で1年かかることもある」と伝えられました。
しかし、男性は「そんなに待っているわけにはいかない」と考え、地域の了解を得て作業を進めました。草の根を抜き、耕し、農地の復元を進めました。しかし、田に水を供給する水路が土砂で埋まっていたため、農業用水を5キロ先の川から引く必要がありました。
また、法律上は問題となる「闇小作」のため、正規の手続きを経ていないために、畑地化交付金の申請や農業共済の加入は行っていません。
農地と地域の環境を守るために
48年前に闇小作が法規制された当時は、米作りが盛んであり、所有者不明農地は存在しないものでした。しかし、現代は米価が上がらず、農地を守る担い手も減ってきています。男性は「どうすれば農地と地域の環境を守れるのか」と自問しました。
男性は2001年に農業法人を設立し、農地集積の受け皿となる取り組みを始めました。その頃から約20年が経ち、男性自身も高齢者となりました。地域には、農地を巡る様々な光と影が交錯しています。
炎天下の8月末、男性は指さした先に整備された水田地帯を紹介しました。センチピードグラスを植えたあぜが幅2メートルに広がり、少ない人数で効率的に作業を行うための先駆的な取り組みです。
以上が、「闇小作」の現実を苦闘する男性のお話でした。農地問題は今後も解決を求められる重要な課題です。