地球外生命体、「あと数年」で見つかると言われている理由は?

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パラブ・ゴーシュ科学担当編集委員

天文学者の多くが、「この宇宙のどこかに生命がいるのだろうか」とはもう問わなくなっている。

代わりに学者らの頭の中にあるのは、「我々はいつ、生命を見つけられるのか」という疑問だ。

多くの研究者が、我々が生きているうち、もしかしたら今後数年以内に、生命のしるしを検知できると前向きに考えている。

「ゴルディロックス・ゾーン」とは?

現在の科学では、宇宙望遠鏡で惑星や遠方の周回する星の大気を分析できる。これにより、少なくとも地球上では生物だけが生成できる化学物質を探すことが可能だ。

こうした発見の一端が、今月初めにあった。地球から120光年離れた「K2-18b」と呼ばれる惑星の大気に、地球では海洋生命が生成する硫化ジメチル(DMS)が存在する可能性が示唆された。

この惑星は、天文学者が「ゴルディロックス・ゾーン」と呼ぶ領域に位置している。星の表面温度が高すぎも低すぎもせず、生命に必要な液体の水が存在できるような恒星との距離関係だ。

研究チームは1年以内に、このあいまいな生命のしるしが確認されるのか、消えてしまうのかが分かるとみている。この研究を主導した英ケンブリッジ大学天文学研究所のニック・マドゥスダン教授は、このしるしが確認されれば、「生命探査についての考え方を劇的に変えることになるだろう」と話した。

太陽系での探査

遠くの惑星に目を向ける天文学者がいる一方で、調査範囲を我々の裏庭である太陽系に絞る研究チームもある。

太陽系で最も生命がいる可能性が高いのが、木製の氷の衛星「エウロパ」だ。その地表には、トラの縦じまのような美しい亀裂が入っている。エウロパの氷の地表の下には海があり、そこから水蒸気が宇宙空間に噴出している。

NASAの探査機「クリッパー」と欧州宇宙機関(ESA)の「木星氷衛星探査機(JUICE)」は共に、2030年代初頭にエウロパにたどり着く予定だ。

JUICE計画が承認された2012年、私はこの計画の主任科学者であるミシェル・ドウワーティー教授に取材を申し込み、生命を見つける可能性があると思うかを聞いた。同教授の回答は、「木星の氷の衛星のひとつに生命体がいなかったとしたら、それはむしろ驚くべきことだ」というものだった。

NASAはまた、土星の衛星の一つである「タイタン」に探査機「ドラゴンフライ」を送り込んでいる。タイタンには有毒な炭素を多く含む化学物質からなる湖や雲があり、惑星を不気味なオレンジ色のもやで覆っている。だがこうした物質は水と共に、生命誕生に必要だと考えられている。

火星は現在のところ、あまりにも生物には適さない惑星と考えられている。しかし天文生物学者らは、かつてこの惑星は緑豊かで、厚い大気と海があり、生命を維持することができたとみている。

現在、NASAの火星探査車「パーサヴィアランス」が、太古に河川のデルタ地帯があったとみられるクレーターでサンプル採取を行っている。これらのサンプルは、今はもういない単純な生命体の微化石を分析するため、2030年代に計画されている別のミッションで地球に持ち帰られる予定だ。

地球外生命体が人類に接触する可能性は?

科学者の中には、この疑問はサイエンス・フィクションの領域であり、望みは薄いと考える人もいる。一方で、地球外知的生命体探査(SETI)研究所をはじめとして、他の星からの電波信号の探査は何十年も続けられてきた。

宇宙空間はとても広いため、これまでの探査は無作為に行われてきた。しかし、ウェッブ望遠鏡などが、異星人の文明が存在する可能性が最も高い場所を特定できるようになったことで、SETIは探索の焦点を絞れるようになった。

SETIのカール・セーガン宇宙生命体研究センターのナタリー・カブロル所長は、こうした新技術が新たな原動力になったと話す。同研究所は望遠鏡群を近代化し、現在では遠くの惑星からの強力なパルスレーザーによる通信を探す機器を使っている。

著名な宇宙生物学者であるカブロル氏は、SETIの信号探査に懐疑的な科学者がいるいる理由も分かっていると話す。

だが、はるか彼方の惑星の大気で化学的な示唆があったことや、衛星のフライバイ(近接通過)からの興味深い測定値、火星からの微化石にすら、解釈の余地があるという。

異星人からの信号を探すことは、「生命の証拠を見つけるためのさまざまなアプローチの中で、最もとっぴに思えるかもしれない。だがそれは最も明確で、いつでも起こりうることでもある」と、カブロル博士は述べた。

「実際に理解できる信号があった場合を想像してみてほしい」

30年前、我々は他の恒星の周囲をめぐる惑星について何も知らなかった。それが今では、5000個以上の惑星が発見され、天文学者や宇宙生物学者はそれらを前例のない詳しさで研究できる。

「K2-18b」の研究チームに所属する英カーディフ大学のスバジット・サルケル博士は、驚異的な科学的ブレークスルー以上の発見につながる要素はすべてそろっていると語る。

「もし生命のしるしが見つかれば、それは科学における革命であり、人類が自分自身と、宇宙における自分たちの居場所を見つめる方法を大きく変えることになるだろう」

(英語記事 Why finding alien life is now ‘only a matter of time’)