ゼレンスキー大統領と軍の不協和音、ザルジニー総司令官に知らせず司令官交代

ゼレンスキー大統領が一方的に「特殊作戦軍のホレンコ司令官解任」を発表しました。この突然の人事に、ホレンコ司令官やザルジニー総司令官、そしてウクライナ軍自体も報道で知ることになりました。さらに、ゼレンスキー大統領はThe Economist紙の記事に反応し、「前線の状況は膠着状態ではない」と主張しました。

大統領府と軍の意思疎通に何らかの問題が生じていると考えて間違いないだろう

ゼレンスキー大統領とザルジニー総司令官の関係は以前から何度も報道されてきましたが、The Economist紙のインタビューでゼレンスキー大統領は「(ロシア軍を消耗させればプーチンを止められるという思い込みは)私の間違いだった。反攻作戦が期待を裏切り膠着状態に陥っている」と認めました。国防安保委員会のダニロフ書記も3日、「ザルジニー総司令官の主張は正しく新しいアプローチが必要だ」と述べました。それにもかかわらず、ゼレンスキー大統領は唐突に不可解な人事を発表し、注目を浴びることとなりました。

出典:Командування Сил спеціальних операцій ЗС України ヴィクトル・ホレンコ少将

ゼレンスキー大統領は3日、「ヴィクトル・ホレンコ少将をウクライナ特殊作戦軍の司令官から解任し、新たにセルヒイ・ルパンチュク大佐を司令官に任命する」と発表しました。ホレンコ少将は特殊作戦軍の指揮を執っており、特にアウディーイウカ方面で多くの作戦に関与していました。ホレンコ少将自身もメディアの取材で「理由は不明だが、解任の知らせは報道で知った。ザルジニー総司令官と話をしたが、彼も状況を説明することができない。現時点で軍から私に関する連絡は一切ない」と述べています。

ウクライナのジャーナリスト、ブトゥソフ氏は「ゼレンスキー大統領はホレンコ少将が知らないうちに、彼の直属の上官であるザルジニー総司令官の同意なしに特殊作戦軍の司令官を解任した。ウクライナ軍上層部はホレンコ少将の解任やルパンチュク大佐の任命はザルジニー総司令官との協議が行われないまま発表されたと認めている。特殊作戦軍の司令官解任は軍事的な必要性によるものではない。これは大統領府がウクライナ軍におけるザルジニー総司令官の影響力を弱めるための決定だろう。ゼレンスキーは大統領選の競合候補としてのザルジニーを恐れている」と指摘しています。

出典:Рустем Умєров ウメロフ国防相

大統領府は4日、「ホレンコ司令官の解任はウメロフ国防相の要請によるもので、現行法によればウクライナ軍の司令官人事は国防相の提案に基づいて大統領が決定を下す」と説明し、「ホレンコ司令官の解任と後任の任命は合法だ」と主張しています。また、ウメロフ国防相も「ホレンコ少将は『ある方面』で必要とされているため、国防省内で引き続き勤務する。戦時中に上級指揮官を交代させる理由を明かすのは敵に利するだけなので明かさない」と述べ、ホレンコ少将は国防省情報総局での勤務が予想されています。

法的には、ザルジニー総司令官と協議する必要はなかったかもしれませんが、特殊作戦軍の司令官交代をザルジニー総司令官やウクライナ軍に知らせずに発表したのは異常な行為です。大統領府と軍の間で何らかの意思疎通の問題が生じていることは間違いありません。

出典:PRESIDENT OF UKRAINE

ちなみに、ゼレンスキー大統領は4日、「前線の状況は膠着状態ではない」と主張しています。また、イーゴリ・ジョフクヴァ大統領府副長官も「私が軍人なら、前線で起こっていることを報道機関や市民に明かすのは一番最後になる」と述べており、現地メディアは「大統領府がザルジニー総司令官に前線の状況を明かさないよう促した」と報じています。

ゼレンスキー大統領や大統領府の動きをどう解釈するかは様々ですが、私は「大統領府によるザルジニー総司令官への警告」もしくは「ザルジニー総司令官の交代の前兆」ではないかと解釈しています。とにかく、キーウの政治状況は何かがおかしいです。

追記:ザポリージャ州では3日の朝、第128旅団の兵士が「砲兵の日を記念した表彰式」のため最前線に近い村に集められましたが、ここにロシア軍のイスカンデルMが着弾し、20人以上が死亡しました。ウメロフ国防相は4日、「この悲劇を徹底的に調査するよう指示した」と発表しており、表彰式の場所と時間がロシア軍に漏れていたことは確かです。

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※アイキャッチ画像の出典:PRESIDENT OF UKRAINE

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