円相場が1ドル=151円台後半に下がり33年ぶりの安値水準を目前にしている。米国と日本が相反する通貨政策を運用し金利差が大きくなった影響だが、通貨政策の正常化を控えた日本銀行の悩みも大きくなっている。
金利差と円安
円が急落している最大の要因は、日米の金利差だ。安い円を売りドルのような高金利通貨を買う動きが活発になり、円安がさらに加速している。米連邦準備制度理事会(FRB)は年内に金利を引き上げる可能性は低いとされているが、長期的に高金利環境を続ける意向を示しており、円安が長期化する可能性もある。さらに、日本経済新聞によると、貿易と海外投資の外貨資金が日本国内に戻らずにいる状況も円安の主要因の一つとして指摘されている。
円安の狙いと課題
日本当局は、円安を利用して景気低迷から脱出しようとしている。企業が輸出競争力を高めるために円安を活用し、投資を促進して賃金引き上げを実現し、消費を活性化させることで経済成長を目指す計画だ。しかし、長期間の景気低迷からの回復を経験してきた企業は慎重な姿勢を見せ、民間消費の活性化が進まない状況が続いていると指摘されている。円安が日本経済にとって有益な要素だという考え方は従来支配的であったが、最近では輸入物価の上昇や輸出の停滞による否定的な影響も指摘されている。経済対策や補正予算によって円安のマイナス面を緩和し、プラス面の効果を最大化することが重要とされている。
通貨政策の正常化への道
通貨政策の正常化は避けられないという声も出ている。日本銀行は2016年から長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)政策を導入し、市場金利を低く保つために国債を買い入れてきた。しかし、通貨政策の正常化に向けて着実な進展が見られていないとの評価もある。日本銀行の植田和男総裁は、景気回復の兆しが明確になってから通貨政策の正常化に取り組む必要があると述べている。また、通貨政策の正常化に際しては財政リスクも確認しなければならない。日本政府の負債規模がGDP比200%を超えており、金利が上昇すれば利子費用も増加することになる。
日本銀行は今後、労使賃金交渉の結果や経済の動向を注視しながら、通貨政策の調整を行っていくことが予想される。