ロシアの人海戦術、ロシア大統領選に向けて犠牲を払う

ロシア国旗

ロシアによるウクライナ侵略は、東部や南部の前線で激しい戦闘が続いています。特に東部ドネツク州のアブデーフカでは、ロシア軍が戦闘車両不足に見舞われ、歩兵による「人海戦術」を展開しています。そのため、ロシア軍の損耗が拡大しているようです。プーチン大統領が来年のロシア大統領選に立候補することを視野に入れると、戦果を急ぐ意図がうかがえます。

ウクライナの戦況とロシアの攻撃

ウクライナのゼレンスキー大統領は最近、東部ドネツク州とハリコフ州で激しい戦闘が1時間たりとも止むことなく続いていると述べ、戦線の熾烈さを強調しました。

ロシア軍は今年10月以降、ドネツク州全域を制圧するための進軍ルートを確保し、ドネツク市の安全を確保するために、アブデーフカへの攻勢を強めています。ウクライナ軍高官によると、露軍の攻撃頻度は11月下旬から約30%増加し、「第3波の攻撃が開始された」と指摘されています。ただし、この攻撃は戦闘車両ではなく、歩兵主体で行われているとされています。

シンクタンク「戦争研究所」は、歩兵主体の攻撃について、ロシア軍の装備が著しく損耗しているために、ロシア軍の前進が急激に進まないと指摘しています。

歩兵部隊の攻撃とロシア軍の死傷者

ロシア軍は相当な損害を被っているようです。英国防省の分析によると、ロシア軍の死傷率は侵略開始後、過去6週間で最も高い可能性があるとされています。ウクライナ軍の発表によれば、今月のロシア軍の死傷者は平均で1日に931人に達しており、その多くはアブデーフカでの戦闘によるものだとされています。これまで最も死傷者が多かったのはドネツク州のバフムトでの激戦が行われた3月で、1日の平均死傷者数は776人だったそうです。

ロシア軍は多くの死傷者を出しながらも、アブデーフカの制圧を急いでいるのは、プーチン氏が大統領選までに主要な「戦果」としてアピールするためとも言われています。

戦局の現状とドローン攻撃

ハリコフ州ではウクライナ軍の大半が奪還されましたが、ロシア軍は要衝のクピャンスクの制圧を目指して攻勢を強化しています。しかし、ウクライナ軍によって阻まれています。

一方、南部戦線では、ウクライナ軍がヘルソン州でドニエプル川を渡り、同川東岸の露軍支配地域に拠点を確保しました。クルインキ周辺では両国軍の戦闘が続いていますが、進展は見られません。

局所的な激戦が続く一方で、戦局全体では膠着状態が続いています。そして、双方は相手の首都などに向けた長距離攻撃によるドローンの使用を活発化させています。ウクライナ空軍によると、ロシア軍は24日から25日の夜間にかけてウクライナの首都キーウなどを標的とした約75機の自爆ドローンを発射したそうですが、ウクライナ空軍は70機以上のドローンを撃墜しました。

一方、ロシア国防省は26日、首都モスクワ近郊のモスクワ州上空などでウクライナ軍のドローン24機を撃墜したと主張しています。ウクライナ国防省情報総局は、これは前日のドローン攻撃に対する報復攻撃であったことを認めました。

このような後方へのドローン攻撃は、国民に対する心理的な圧力をかける狙いもあるようです。

参照リンク: https://news.yahoo.co.jp/articles/685e7a013106ee538b1df34b41f3eeead8630781