【ソウル=桜井紀雄】日本による朝鮮半島統治からの解放を記念する「光復節」の韓国政府式典が15日、中部、天安(チョナン)で開かれた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は演説で、昨年10月のいわゆる徴用工判決以降、関係が悪化した日本に対し「今でも日本が対話と協力の道に出てくれば、快く手を握る。公正に交易し、協力する東アジアをともにつくっていくだろう」と呼び掛けた。
国際分業体系の重要性を指摘し、自国が優位な部門を武器にすれば、平和な自由貿易秩序が壊れるしかなく、「先に成長した国が後から成長する国のはしごを払いのけてはならない」と日本政府による輸出管理の厳格化を批判。「日本の不当な輸出規制に立ち向かい、われわれは責任ある経済強国への道を一歩一歩進む」と主張した。
半面、日本と安全保障・経済協力を続けてきたとし「日本が隣国に不幸を与えた過去を省察する中、東アジアの平和と繁栄をともに導いていくことを望む」と述べた。昨年の韓国・平昌冬季五輪に続き、来年は東京五輪が、2022年には北京冬季五輪が開かれることを挙げて「東アジアが友好と協力の土台を固め、共同繁栄の道に進む絶好の機会だ」とし、「東京五輪で友好と協力の希望を持てるよう願う」と強調した。
日韓関係が悪化の一途をたどり、韓国内で東京五輪のボイコットを求める声も出る中、関係改善を模索するメッセージといえる。ただ、文氏は肝心の徴用工判決について政府として積極的に解決に関与することを拒んでおり、抜本的な関係改善につながる見通しは暗い。
北朝鮮が短距離弾道ミサイルなどの発射を繰り返していることを「憂慮される行動」としつつも「対話の雰囲気が揺るがないことこそ韓国政府が進めてきた朝鮮半島平和プロセスの大きな成果だ」と誇示。任期内に非核化と平和体制を確固たるものにすると誓うとも述べた。