ミスタードーナツ、苦境からの復活劇
日本のドーナツ市場を牽引してきたミスタードーナツ。1971年の創業以来、順調に店舗数を拡大してきましたが、2010年代に入るとコンビニエンスストアの台頭や、新型コロナウイルス感染症の流行など、厳しい市場環境の変化に直面し、業績は低迷。一時は1300店を超えていた店舗数が、3割も減少するという苦境に立たされました。
しかし、近年は売上を回復させており、2024年3月期には5年ぶりに店舗数が1000店の大台に回復。見事復活を遂げました。
低迷の要因は「努力不足」
ダスキン最高執行責任者(COO)の和田哲也氏は、ミスタードーナツの業績低迷の要因を「努力不足」と分析しています。
和田氏は、2015年にミスタードーナツ事業本部長に就任。当時、コンビニエンスストア大手によるドーナツ販売への参入が進んでいましたが、低迷の兆候はさらに数年前から表れていたと振り返ります。
「当時は外食産業全体が価格競争に陥っていました。私たちも、本来の価値を高めることよりも、100円均一セールのような期間限定の値引きに頼ってしまい、他社との差別化を図ることができませんでした」
結果として、フランチャイズチェーン店を含めた売上高は、2014年3月期の1030億円から2019年3月期には740億円にまで減少。不採算店舗の閉店を余儀なくされ、国内店舗数は2014年3月の1350店から2021年3月には961店にまで減少しました。
「新しい価値を創造できなければ、顧客の来店頻度は増えず、飽きられてしまうのは当然です。業績低迷の最大の要因は、私たち自身の努力不足にあったのです」
若年層へのシフトチェンジ
ミスタードーナツは、低迷から脱却するために2016年に経営戦略の転換を断行。従来の30~40代の固定客中心から、若い世代にターゲットを絞った商品開発やマーケティング戦略を展開していくことを決定しました。
ミスタードーナツが販売するドーナツ
成功体験からの脱却
和田氏は、長年ミスタードーナツを牽引してきた経験から、「成功体験にとらわれてはいけない」という教訓を得たと語ります。
「過去の成功体験は、時に未来を見据える目を曇らせてしまうことがあります。市場環境の変化を的確に捉え、常に新しい価値を創造し続けることが、長期的な成長には不可欠です」
1強であるがゆえの難しさ
ミスタードーナツは、長年日本のドーナツ市場で圧倒的なシェアを誇ってきました。しかし、和田氏は、「1強」であるがゆえの難しさもあったと語ります。
「競合企業が少ないため、顧客のニーズを捉えきれず、市場の変化に対応するのが遅れてしまったという反省があります。今後は、常に挑戦者の気持ちを持ち続け、顧客満足度向上に努めていきたいと考えています」
まとめ
ミスタードーナツは、価格競争からの脱却と、新たな顧客層への挑戦によって、見事復活を遂げました。今後も、市場環境の変化に柔軟に対応し、顧客に愛されるブランドとして成長し続けることが期待されています。