「トイレに駆け込んで嘔吐した」ブルーインパルスに憧れたプロ航空写真家が浴びた“壮絶すぎる洗礼”とは


【貴重写真】雪をいただいた富士山を背に6機が…黒澤氏が同乗撮影したブルーインパルスの写真を見る

 左目が見えないハンデを抱えながらも、なぜブルーインパルスを追い続けたのか、黒澤氏に話を聞いた。(全2回の1回目/ 続き を読む)

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5歳で左目を失明…それでもブルーインパルスを追う“夢”を諦めなかったワケ

「これまでもブルーインパルスに関する写真集は出させていただいていましたが、時系列や記録的な要素を取り除いた、ブルーインパルスが持つ『躍動感』を前面に押し出した写真集を一度は出したい、と以前から思っていました。今回、武田頼政さん(ノンフィクションライター。本書の編集も担当)から同様のお話をいただき、写真集を出すことになりました」

――そもそもなぜ航空写真家を目指されたのでしょうか?

「母の実家が、ブルーインパルスが拠点とする宮城県の松島基地のそばにあり、小学5年生のころ、たまたま休日に実家に連れて行ってもらったときに、基地の上で青い飛行機がスモークを出して飛んでいるのを見て感動したのですが、それがブルーインパルスだったんです。すぐに夢中になって、最初は航空自衛隊でブルーインパルスの整備員になりたいと思っていました」

「ですが、幼少期に事故で左目を失明していて、高校3年生の時に自衛隊の説明会に行った際『その状態だと難しい』と言われてしまい、すごく落ち込みました。けれど、『整備員が駄目なら、好きで撮っている写真で航空写真家になって、ブルーインパルスに近付こう』と決意したんです」

体重の4倍以上のGがかかり…ブルーインパルスの同乗撮影で受けた“洗礼”

「機内での撮影はパイロットとの共同作業で、成功するかどうかはパイロットとの事前の打ち合わせで8割がた決まります。残りの2割は当日の天候と体調です」

――めまぐるしく動く機内で撮影する大変さはありませんでしたか?

「重力がものすごくて、宙返りすると体重の4倍から5倍の重力がかかります。持っているカメラが2キロだとしたら宙返りのときには10キロになる。そのことに慣れる必要があったので、同じ重さのバーベルを持って、感覚を頭に叩き込んでいました。実際の撮影では、宙返りが始まる前からあらかじめファインダーを覗いて構えておいて、宙返りが始まったらその重さに耐えて撮影していました」

――最初にブルーインパルスの機内で撮影したときはいかがでしたか?

「事前にテスト飛行を何回か受けてから同乗して撮影しましたが、じつは最初の2回は全く酔わなかったんです。きっと夢のコックピットに乗ってアドレナリンが出ていたのと、限定された課目で休憩をはさみながら飛行していたので、負荷がそこまでかからなかったのかもしれません。ですが、3回目のフルアクロ1区分同乗では着陸したあと自力で降りられないくらいヘロヘロになりました(笑)。整備の方に引っ張ってもらって、トイレに駆け込んで吐いてしまい『うわー、ブルーインパルスの世界ってこうだったのか』と」



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