パキスタンでポリオ感染拡大、ワクチン未接種が100万人超え:根絶への道のりは遠く

パキスタンで再びポリオウイルスが猛威を振るい、深刻な状況となっています。9月にはワクチン未接種の子供が100万人を超え、根絶に向けた取り組みが大きく後退しています。今回は、パキスタンにおけるポリオ感染拡大の現状と、その背景にある課題について詳しく解説していきます。

ワクチン未接種が招く悲劇:増加するポリオ患者数

2023年10月、パキスタンで新たにポリオ患者が十数例確認され、年間の患者数は合計39例に達しました。前年のわずか6例から急増しており、世界保健機関(WHO)が目指すポリオ根絶への道のりは、依然として険しいことが浮き彫りとなっています。

パキスタンでポリオの予防接種を受ける子どもパキスタンでポリオの予防接種を受ける子ども

ポリオは、主に5歳未満の子供を襲う感染力の強いウイルス性疾患です。麻痺や呼吸器障害などの深刻な後 sequelae を残し、死に至るケースも少なくありません。有効な治療法は存在せず、ワクチン接種による予防が唯一の対抗手段となっています。

ポリオ根絶を阻む壁:医療不信と偽情報

パキスタンでは、長年にわたりポリオワクチンの普及活動が行われてきました。しかし、医療機関に対する根深い不信や偽情報が蔓延し、多くの子供たちがワクチン接種を受けられない状況が続いています。

特に、2011年に発覚した、米中央情報局(CIA)による偽の予防接種プログラムを利用したビンラディン容疑者追跡事件の影響は大きく、国民の間でワクチンへの疑念が一気に高まりました。

また、宗教的な理由やポリオの危険性に対する認識不足も、ワクチン接種を妨げる要因となっています。

バロチスタン州で深刻化する感染拡大

最近のポリオ感染は、アフガニスタンと国境を接する南西部のバロチスタン州で特に深刻化しています。地元当局によると、偽情報の拡散や医療従事者への不信感が根強く、多くの親が子供のワクチン接種をためらっているといいます。

ポリオのない未来を目指して:啓発活動と医療体制の強化

パキスタン政府は、ポリオ感染拡大を食い止めるため、監視体制の強化やワクチン接種キャンペーンの実施など、さまざまな対策を講じています。しかし、医療不信を払拭し、ワクチン接種率を向上させるためには、より効果的な啓発活動や医療体制の強化が不可欠です。

WHOは、「ポリオの流行は、公衆衛生上の緊急事態」と警告を発しています。パキスタンにおけるポリオ感染拡大は、決して対岸の火事ではありません。世界中の人々がポリオの脅威から解放される日が来ることを願い、私たち一人ひとりがこの問題に関心を持ち続けることが重要です。