セブンイレブン、業績不振の影に潜む「2つの誤算」とは?

セブン&アイ・ホールディングスの2025年2月期通期業績予想の下方修正が波紋を広げています。当初5450億円を見込んでいた営業利益は、4030億円へと大幅に下方修正されました。この数字は前期比24.6%減という衝撃的なもので、好調を維持してきたセブン&アイの業績に急ブレーキがかかった形です。

一体セブンイレブンに何が起こっているのでしょうか?本記事では、セブンイレブン業績不振の背景を探ると共に、今後の戦略について考察していきます。

アメリカ経済の二極化、そしてタバコ離れ…海外事業における誤算

今回の下方修正の主な要因は、海外コンビニ事業の不振です。2025年2月期上半期の営業利益は、前年同期比22.4%減の1869億円。特に、海外コンビニ事業の営業利益は前年同期比35.0%減の733億円と大幅に落ち込みました。

この背景には、アメリカ経済の二極化が大きく影響しています。物価高騰の影響を受け、中間層が縮小し、富裕層と貧困層の二極化が進行。結果として、ウォルマートやコストコといったディスカウントストアが支持を集める一方で、コンビニのような intermediary な価格帯の店舗は顧客獲得に苦戦を強いられています。

さらに、コンビニの主力商品であるタバコの販売不振も追い打ちをかけます。アメリカでは健康志向の高まりからタバコ離れが加速しており、2023年のタバコの販売数は2019年比で26%も減少しました。

セブン&アイは、海外コンビニ事業において、オリジナル商品の開発やM&Aによる店舗網拡大など、様々な施策を講じています。しかし、アメリカ経済の構造的な変化や消費者の嗜好の変化を考えると、これらの施策だけで業績回復を実現するのは容易ではありません。

猛暑なのに客足鈍る…国内コンビニ事業における誤算

[セブンイレブン、業績不振の影に潜む「2つの誤算」とは?

※月次営業情報より筆者作成](https://news.yahoo.co.jp/articles/faefc16094ee51dbaed128e7375214d306624ef8/images/001)

海外事業の不振に加え、国内コンビニ事業も苦境に立たされています。セブンイレブンの既存店売上高と客数は、2023年1月から2024年1月までは前年同月比プラスで推移していましたが、2024年2月以降はマイナス傾向が続いています。

特に、例年であればかき入れ時となるはずの夏季においても、客足は鈍化しました。2024年6月から8月の客数は、猛暑の影響もあり前年同期比0.4%減。2023年の同時期が2.5%増であったことを考えると、異常事態と言えるでしょう。

コンビニ業界に詳しい専門家は、「物価高騰の影響で消費者の節約志向が強まっていることに加え、コンビニ弁当の値上げや内容量減に対する顧客の不満が高まっていることも、客足鈍化の要因として考えられます。」と指摘します。

実際、SNS上では、セブンイレブンの弁当容器の「上げ底」を指摘する声や、価格に見合った価値を提供できていないという批判も見られます。

セブンイレブン復活への道筋

セブン&アイは、2023年2月に創業以来初となる構造改革を発表しました。イトーヨーカ堂など不採算事業の縮小や、デジタル化の推進による業務効率化などを進めていますが、その成果はまだ見えていません。

セブンイレブンが、かつてのような成長軌道に戻るためには、海外事業の立て直しはもちろんのこと、国内事業においても抜本的な改革が求められます。

具体的には、商品力の強化、店舗オペレーションの効率化、デジタル技術を活用した顧客体験の向上など、多岐にわたる取り組みが必要となるでしょう。

消費者の価値観が多様化する中、コンビニ業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。セブンイレブンは、変化の兆候をいち早く察知し、柔軟に対応していくことが求められます。