「スポーツカー」と聞くと、流線型のフォルムが美しいクーペタイプを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし、セダンとハッチバックの両方がラインナップされている車種の場合、スポーティな印象を与えるのは、実はハッチバックの方が多いようです。
なぜハッチバックは「スポーツ」を名乗ることが多いのでしょうか?その背景には、自動車業界の伝統的な命名規則や、それぞれのボディタイプが持つイメージ戦略が深く関わっているようです。
セダンとハッチバック:イメージ戦略の違い
トヨタ・カローラやクラウン、スバル・インプレッサ、マツダ・アテンザといった車種には、かつて「スポーツ」というサブネームを持つモデルが存在していました。これらのモデルに共通するのは、いずれもハッチバックボディを採用している点です。
トヨタの公式見解によると、「カローラスポーツ」という車名は、「若々しくかっこいい、さらに、スポーティな印象を与える」という意図で名付けられたそうです。
では、なぜハッチバックは「若々しくスポーティ」というイメージと結びつくのでしょうか?それは、セダンと比較した際のスタイリングの違いが大きく影響しています。
伝統的にセダンは、フォーマルな印象を与えるボディタイプとして認識されてきました。一方、ハッチバックは、全長が短く、キビキビとした走りを連想させることから、スポーティでカジュアルなイメージを持たれやすい傾向があります。
ハッチバック=スポーツ:自動車業界の命名規則
自動車メーカーは、セダンをベースに開発したハッチバックモデルを差別化するために、「スポーツ」というサブネームを付けることが一般的です。
例えば、スバル・インプレッサは、かつてはセダンとハッチバックの両方がラインナップされていましたが、現在はハッチバックのみの展開となり、「スポーツ」のサブネームは廃止されました。
一方、ホンダ・シビックやフォルクスワーゲン・ゴルフのように、当初からハッチバックのイメージが強い車種では、「スポーツ」という表現はあまり使われません。
クラウンの例に見る、ボディタイプとサブネームの関係
現行型のクラウンは、セダン、ハッチバック、SUVテイストの4ドアクーペ、ステーションワゴン的SUVという4つのボディタイプをラインナップしています。
興味深いことに、それぞれのサブネームは、ボディタイプの特徴を端的に表しています。ハッチバックは「スポーツ」、SUVテイストの4ドアクーペは「クロスオーバー」、ステーションワゴン的SUVは「エステート」と名付けられています。
このことからも、クラウンの基本はセダンであり、他のボディタイプはセダンとの差別化を図るために、それぞれ異なるサブネームが与えられていることがわかります。
まとめ:ハッチバックと「スポーツ」の関係
ハッチバックが「スポーツ」を名乗る背景には、自動車業界における伝統的な命名規則や、それぞれのボディタイプが持つイメージ戦略が大きく影響しています。
ハッチバックは、セダンに比べてスポーティでカジュアルなイメージを持たれやすく、自動車メーカーは、そのイメージを強調するために「スポーツ」というサブネームを付けることが多いのです。
もちろん、すべてのハッチバックがスポーティな走りを楽しむことを目的とした車というわけではありません。しかし、ハッチバックというボディタイプが持つ潜在的なイメージと、自動車メーカーの戦略が組み合わさることで、「ハッチバック=スポーツ」という図式が成り立っていると言えるでしょう。