3カ月前のことになるが、筆者は「米国株の堅調」は政権がどちらに転んでも続く」(7月23日配信)で、米国株が大統領選挙の情勢が混沌とする中でも、同月にS&P500種指数が最高値を更新していたことについて、「株高が続くのは自然」との判断を示した。
■アメリカは予想どおり年率2%超の成長が継続
その後、米国株は、8月初旬の雇用統計の下振れなどで一時的に急落する場面があったものの、すぐに反発。9月から10月半ばまで、最高値を更新しながら上昇する展開が続いている。
前出のコラムでも指摘したが、インフレ鎮静化を実現しつつあるアメリカのFRB(連邦準備理事会)は筆者の予想どおりに、9月会合(17~18日)で利下げを開始した。この間、失業率が上昇したこともあり、いわゆるサーム・ルールに抵触して、一時期は景気後退が再びかなり懸念された。
ただ、10月4日に発表された9月の雇用統計は前月対比で+25.4万人、と予想外の雇用増が示され、失業率の上昇も止まるなど、労働市場の減速はかなりマイルドである。
また10月18日に発表された9月の小売売上高コア(季節変動の大きい自動車、ガソリン、外食、建設資材を除く)は、前月比+0.7%と、かなり高い伸びだった。これらを踏まえると、筆者の予想とおり、アメリカの経済成長は7~9月期も年率2%を超える安定的な成長が続いているとみられる。
インフレ率が2%台まで沈静化しつつ、経済がソフトランディングの経路で落ち着く経済環境であれば、当然のことながらEPS(1株当たり利益)も増える。さらに、FRB(連邦準備制度理事会)による利下げがしばらく続きそうなので、時価総額の大きい「メガキャップ銘柄」を中心に、割高な領域にある米国株市場のバリエーション(PER=株価収益率などの指標でみた企業価値評価)も正当化されやすい。
このように、2024年初から続く好ましい状況が一段と鮮明になっているのだから、すでに年初の想定レンジの上限を超える株高が実現しているのだが、足元までの米国株の上昇に、引き続き違和感は覚えていない。
■「レッドウェーブ」なら「アメリカファースト」が鮮明に
一方、11月5日に開票されるアメリカの大統領選挙が、世界の金融市場にとって目先の大きなイベントになる可能性が高まっている。仮にカマラ・ハリス大統領誕生、民主党が上下院とも議会を制する、いわゆるブルーウェーブなら、富裕層や企業への増税政策が行われるため、株式市場の心理を冷やすだろう。