米アップルはワイヤレスイヤホン「AirPods Pro 2(エアーポッズプロ2)」で、難聴者の聴覚を補助する新機能を週内に日本で提供することを産経新聞の取材で明らかにした。国内で医療機器として認可が下りた。軽度から中等度の難聴に対応し、補聴器の代わりとなる。一般の補聴器は高価だが、アップルのイヤホンは割安で、市場に変革をもたらす可能性がある。
【別カットをみる】補聴器の代わりになるアップルのワイヤレスイヤホン「エアーポッズプロ2」。軽度から中等度の難聴者の聴覚機能をサポートしてくれる
■アイフォーンで聴力検査 自動で音を調整
アップルは9月に米国で聴覚補助機能を発表。日本でも聴覚機能を補助するソフトウエアの認可を申請していた。日本や米国などで週内に提供を始める。
新機能は軽度から中等度の難聴者をサポートする。聴覚のチェックと補助の2つの機能がある。使い方はイヤホンとスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」をつなぎ、聴力検査を行う。イヤホンを装着し、音が聞こえるたびに画面をタップする。5分後に、どの程度の難聴か結果が判明する。
難聴だった場合は聴覚補助機能を設定。聴力検査のデータを使い、声や周囲の音を聞き取れるように自動で調整してくれる。
今回の開発について、アップルでハードウエアエンジニアリング担当の上級副社長を務めるジョン・ターナス氏は産経新聞の取材に「従来のヘッドホンと異なり、機能を追加するという考え方を取り入れた。聴覚機能はソフト更新で無償で提供する」と述べた。
■スタイリッシュなデザイン性を訴求
アップルの補聴器市場の参入で低価格化が進む可能性もある。エアーポッズプロ2は3万9800円(税込み)で、国内の一般的な補聴器は片耳10万~30万円程度と価格差がある。
日本補聴器工業会の2022年の調査によると、国内で難聴、もしくは難聴だと思っている人の割合は国民全体の10%に上る。
ただ、補聴器の所有率は難聴者の15・2%と低く、65歳以上の高齢者が8割以上を占める。重症度別の所有率は高度・重度が48%だが、中等度が18%、軽度も11%と低い。
アップルのヘルスケア担当のバイスプレジデント、サンブル・デサイ医学博士は取材に「難聴と診断されても治療を受けていない人が世界に75%もいる。日本も難聴の方が多く、その一助になりたい」と話した。