サムスン電子、かつて「技術のサムスン」と謳われた韓国の巨人。しかし近年、その輝きを失いつつあるという声が聞かれます。一体何がサムスン電子を苦しめているのでしょうか?本記事では、サムスン電子の現状と今後の展望について詳しく解説します。
衰退の兆候:利益率低下と株価下落
サムスン電子の資本利益率(ROE)の低下は、総合電子企業としての強みが薄れていることを示唆しています。スマートフォンなどの完成品から半導体、ディスプレイといった部品まで、全て自社で製造する垂直統合型モデルは、かつて大きな強みでした。しかし、一つの事業が不振に陥ると、その影響が全体に波及するリスクも孕んでいます。専門家たちは、まさに今、サムスン電子にこの危機が訪れていると指摘しています。
サムスン電子とTSMCの10年平均資本利益率の推移
サムスン電子の株価も下落傾向にあります。2024年1月2日には7万9600ウォンだった株価が、10月25日には5万5900ウォンまで下落しました。これは投資家たちのサムスン電子に対する不安を反映していると言えるでしょう。
サムスン電子の株価の推移
非メモリー半導体事業の苦戦
証券会社の資料によると、サムスン電子の非メモリー半導体部門は2024年に3兆6千億ウォン(約3990億円)の営業損失を計上する見込みです。この部門は、システムLSI事業部とファウンドリー事業部から構成されていますが、両事業部とも苦戦を強いられています。
その大きな要因の一つが、自社製アプリケーション・プロセッサー(AP)「エクシノス」の不振です。スマートフォン「ギャラクシー」に搭載されてきたエクシノスですが、クアルコムの「スナップドラゴン」と比較して品質面で劣るとの評価を受け、採用が見送られる可能性が高まっています。
これは、モバイル事業部と非メモリー半導体事業部の双方にとって悪影響を及ぼします。モバイル事業部はクアルコムへの依存度が高まり、交渉力が低下するリスクがあります。一方、非メモリー半導体事業部はエクシノスの販売機会を失い、収益性が悪化します。まさに悪循環に陥っていると言えるでしょう。
各事業の競争力低下
問題は、この悪循環が今後も続く可能性が高いことです。サムスン電子は、メモリー半導体、モバイル事業、家電、ディスプレイなど、主要事業のほとんどで競争力の低下に直面しています。
メモリー半導体事業は、高帯域幅メモリー(HBM)などの先端分野で苦戦しています。モバイル事業は、フォルダブルフォンの不振や品質問題に悩まされています。家電やディスプレイ事業も停滞気味です。
これらの課題は、サムスン電子の巨大な組織構造と官僚化、そして技術革新のスピードについていけなくなっていることなどが原因として挙げられています。かつての「ファーストフォロワー」としての機動力を取り戻すことが急務となっています。
投資家の不信感
市場もサムスン電子の危機を深刻に捉えています。外国人投資家はサムスン電子の株式を大量に売却しており、株価純資産倍率(PBR)も1を割り込んでいます。これは、投資家たちがサムスン電子の将来に悲観的な見通しを持っていることを示しています。
サムスン電子は、現状を打破するために抜本的な改革が必要となっています。イ・ジェヨン会長のリーダーシップのもと、具体的な対策を打ち出し、実行していくことが求められています。
まとめ
サムスン電子は、様々な事業で競争力の低下に直面し、深刻な危機に陥っています。この状況を打破するためには、技術革新への対応、組織改革、そして強力なリーダーシップが必要です。「技術のサムスン」の復活を期待したいところです。