Vtuber業界の華やかな舞台裏で、クリエイターへの過剰な修正依頼が問題となっています。自己満足とも言える細かな修正指示、無償のやり直し、そして支払いの遅延…。今回は、Vtuberの「こだわり」と「修正依頼」の実態に迫り、公正取引委員会の勧告内容も踏まえながら、その問題点を探っていきます。
Vtuber運営のリアル:際限ない修正依頼の実態
Vtuberのマネジメント会社で働くAさんは、所属Vtuberからの修正依頼の多さに日々頭を悩ませています。「鼻の高さを1ミリ高く」「前髪を一本一本繊細に」など、その細かさは想像を絶するほど。Aさんは「ビフォーアフターを見ても違いが分からないレベル」と語り、クリエイターの離職も珍しくない現状を明かしました。
Vtuberの3Dモデル作成風景
こうした状況を受け、公正取引委員会はVtuber大手事務所に対し、下請業者への無償修正強要や支払い遅延を理由に勧告を行いました。約1年9ヶ月で243回もの無償修正、最大619日もの支払い遅延…その実態は、まさに「下請けいじめ」と言えるでしょう。Aさんは事務所側の事情として、納品後のギャラ支払いを挙げ、「修正を重ねるうちに当初のギャラでは割に合わなくなる」と指摘します。
現役Vtuberの声:理想の追求と現実の葛藤
現役Vtuberの甘愛乃しふぉんさんは、自身の体験として「理想の自分を追求したい気持ちは誰にでもある」と語り、髪色やバストサイズなど、修正依頼の範囲を契約内で限定していることを明かしました。「こだわりは当然」としながらも、ルールを設けることでバランスを取っているようです。
Vtuberにとって、アバターはまさに「もう一人の自分」。現実では叶えられない理想を投影し、完璧な姿を求める気持ちは理解できます。しかし、その追求がクリエイターへの負担へと繋がってしまっては本末転倒です。
動画制作スタッフの悲鳴:過剰な要求と不当な扱い
一方、動画制作スタッフからは「音程の修正」「ニキビの除去」「4時間に及ぶ修正指示の電話」など、過剰な要求に苦しむ声が上がっています。「好みの問題で修正」「ギャラが相場の半分」といった不当な扱いも少なくないようです。
Vtuberの配信画面
クリエイターの情熱と技術が、Vtuber業界を支えていることは間違いありません。しかし、彼らの労働環境が軽視され、不当な扱いが横行するようでは、業界全体の健全な発展は望めません。
公正な取引の実現に向けて:業界全体の意識改革が必要
Vtuberの「こだわり」とクリエイターの「労働環境」、この両者のバランスをどのように取っていくかが、今後のVtuber業界にとって重要な課題です。公正取引委員会の勧告を機に、業界全体で意識改革を進め、健全な発展を目指していく必要があるでしょう。