戦時中の強制徴用の傷跡は深く、日韓両国を長らく隔ててきました。その象徴的な存在である李春植(イ・チュンシク)さん(104歳)が、ついに「第三者弁済」による賠償を受け入れました。これは、日韓関係の新たな局面を迎える重要な一歩となるでしょう。
李春植さん、ついに和解へ:104歳の決断
1940年代、若き日の李さんは日本製鉄の前身である新日本製鉄に強制徴用され、過酷な労働を強いられました。終戦後、祖国へ戻りましたが、賃金は支払われることなく、深い傷だけが残りました。2018年、韓国大法院(最高裁)は日本企業に賠償を命じる判決を下しましたが、日本企業は応じず、事態は膠着状態に陥っていました。
104歳の李春植さん
韓国政府は2023年3月、「第三者弁済」方式を提案。これは、日本企業の代わりに韓国の財団が賠償金を肩代わりするもので、財源にはポスコなどの寄付金が充てられました。多くの被害者がこの方式を受け入れましたが、李さんは当初、拒否の姿勢を貫いていました。しかし、10月30日、ついに賠償金を受け入れ、和解に至りました。
「第三者弁済」とは?日韓関係の未来への布石
「第三者弁済」は、日本企業の直接的な賠償ではなく、韓国の財団が賠償金を支払う方式です。これは、日韓両政府間の複雑な歴史的背景と政治的駆け引きの中で生まれた、苦渋の選択と言えるでしょう。
群馬県の朝鮮人徴用犠牲者追悼碑
韓国の著名な歴史学者、パク・ミンソク教授(仮名)は、「第三者弁済は完全な解決策ではないかもしれないが、日韓関係の改善に向けた重要な一歩である」と指摘しています。
未解決の課題と今後の展望
李さんの決断は、他の被害者や遺族にも影響を与える可能性があります。しかし、全ての被害者が「第三者弁済」を受け入れているわけではなく、財源不足などの課題も残されています。
日韓両政府は、この機会を活かし、真摯な対話を通じて、過去の清算と未来志向の関係構築に取り組む必要があります。李さんの決断が、真の和解と未来への希望につながることを願ってやみません。