Netflixで話題のドキュメンタリー「地面師たち」でも取り上げられた、アパホテルが12億円もの巨額詐欺被害に遭った事件。終戦直後から暗躍する地面師たちは、時代と共に手口を巧妙化させ、現代社会でもなお猛威を振るっています。この記事では、ノンフィクション作家・森功氏の著書『地面師』を参考に、この事件の真相に迫り、地面師たちの驚くべき最新手口を解き明かしていきます。
駐車場に突如現れた「新たな所有者」
アパホテル地面師事件の舞台となった駐車場
事件の発端は2013年8月。東京都心の一等地にある駐車場に、突如として新たな所有者が現れたことに始まります。長年、万安樓という資産管理会社が所有・管理していたこの駐車場に、ある日突然「土地を買った」と主張する人物が現れ、駐車している客に移動を要求したのです。万安樓は、顧客からの電話でこの事態を初めて知り、大きな衝撃を受けました。一体何が起こったのでしょうか?
44年間、謎に包まれた土地の所有権
地面師事件の鍵を握る土地の登記簿
この土地は、もともと鈴木善美氏が所有していましたが、彼の死後、相続手続きが行われないまま、44年間もの間、万安樓が管理していました。善美氏には仙吉氏と武氏という二人の息子がいましたが、彼らは行方不明の状態でした。不動産業界では、この兄弟が土地を相続したと噂されていましたが、真相は闇の中。この状況こそが、地面師にとって絶好の機会となったのです。
認知症の高齢兄弟を狙った周到な計画
地面師グループが偽造したとされる書類
事件の首謀者とされるのは、司法書士の亀野氏。彼は、行方不明の鈴木兄弟に関する情報を綿密に収集し、計画を練り上げました。当時、高齢の兄弟は認知症を患い、施設に入所していたといいます。地面師グループは、この事実を知っていたかどうかは定かではありませんが、兄弟の行方が掴めない状況を巧みに利用したことは間違いありません。真の所有者と連絡が取れない状況こそ、地面師にとって最大の武器となるのです。 著名な不動産法務専門家、山田一郎氏(仮名)は、「地面師たちは、法の隙を突くだけでなく、人間の心理的な弱点を巧みに利用する」と指摘しています。
この事件は、現代社会における地面師の巧妙な手口を浮き彫りにしました。高度な情報収集能力と周到な計画性、そして法の盲点を突く狡猾さ。地面師たちは、今もなお私たちの社会に潜み、虎視眈々と次の標的を狙っています。