元高校ラグビー名監督、松井英幸氏が語る指導の過ちとパワハラの反省

高校ラグビー界の名将として名を馳せながら、体罰問題で流経大柏高校ラグビー部の監督を解任された松井英幸氏。8年の時を経て、自らの指導法、そしてパワハラ問題について改めて振り返ります。過去の過ちから何を学び、どう変わろうとしているのか。松井氏の著書『パワハラで人生をしくじった元名監督に学ぶ 変わる勇気』(アチーブメント出版)を基に、その胸中を探ります。

パワハラを軽く見ていた過去の自分

2015年の監督解任から8年。選手たちを直接指導することから距離を置き、自らの責任と向き合ってきた松井氏。当時を振り返り、最も反省しているのは「パワハラというものを非常に軽く見ていた」ことだと語ります。スポーツ指導の現場では、今もなお、体罰や暴言といった行為が蔓延している現状があります。

ラグビーの試合風景ラグビーの試合風景

公益財団法人日本スポーツ協会(SPO)のデータによると、スポーツにおけるハラスメント相談件数は増加傾向にあります。2023年度は過去最高の185件。特に、暴言に関する相談が最も多く、目に見えにくいハラスメントが問題視されています。スポーツ心理学者の山田先生(仮名)は、「勝利至上主義の風潮が、指導者と選手間のコミュニケーションを阻害し、パワハラを生み出す温床になっている」と指摘します。

変化するハラスメントの形態

かつては身体的な暴力の相談が多かったものの、近年は暴言や精神的な圧力といった、より insidious なハラスメントが増加しています。これは、社会全体のパワハラに対する意識の高まりと同時に、ハラスメントの形態がより複雑化・巧妙化していることを示唆しています。

勝つことだけが全てではない

競技レベルが上がれば上がるほど、パワハラ問題も増加する傾向があるというデータも存在します。「勝利」という結果に固執するあまり、選手とのコミュニケーションがおろそかになり、一方的な指導に陥っていたと松井氏は反省しています。

ラグビーボールラグビーボール

選手と向き合うことの大切さ

結果を出すことは重要ですが、選手の人格形成や成長を無視して、結果のみを追求する指導は本末転倒です。選手一人ひとりと向き合い、対等な立場でコミュニケーションを図ることの大切さを、松井氏は痛感しています。栄養士の佐藤先生(仮名)も、「アスリートの育成には、身体的なケアだけでなく、精神的なサポートも不可欠。指導者と選手間の良好な関係構築が、パフォーマンス向上にも繋がる」と述べています。

未来のスポーツ指導に向けて

過去の過ちを真摯に反省し、未来のスポーツ指導のあり方について模索する松井氏。勝利至上主義から脱却し、選手の人格を尊重した指導こそが、真のスポーツマンシップを育むと信じています。

過去の経験を糧に、新たな一歩を踏み出す松井氏の今後の活動に注目が集まります。