【パリ=三井美奈】米国で来年1月、第2次トランプ政権が発足することになった。首脳同士のトップ会談を好む〝トランプ外交〟復活を前に、西側諸国では「どの首脳が最も親しい関係を築けるか」に注目が集まる。第1次トランプ政権で良好な関係を築いた「安倍晋三首相(当時)に学ぶべきだ」という指摘も相次ぐ。
欧州では6日、フランスのマクロン大統領がトランプ氏の勝利宣言後、各国首脳に先駆けて祝意を表明した。トランプ氏とは2017年5月に自らが大統領に就任した時以来の付き合いで、「再び共に働きたい」と呼びかけた。直後に電話で25分間会談し、欧州の「顔」として対話相手になりたい意欲が見える。
マクロン氏は17年、トランプ氏を革命記念日の軍事パレードに招いて急接近したが、すぐに通商問題などで衝突するようになった。トランプ氏は今年1月の選挙集会で「マクロン氏はいいやつだ」と言いながら、かつての電話会談の様子を再現して笑いのネタにした。愛憎半ばする関係だ。
先進7カ国(G7)では、最右派のメローニ伊首相が「トランプ氏のお気に入りになるのでは」との見方が浮上する。メローニ氏は不法移民排斥を訴え、「左派叩き」を繰り返す。トランプ氏の姿勢と重なる。
さらに、トランプ氏に近い米実業家、イーロン・マスク氏と親しい。トランプ氏の勝利宣言を受けて7日、マスク氏と肩を寄せ合う写真をX(旧ツイッター)に投稿した。マスク氏と電話会談も行った。弱みは、イタリアの防衛費問題。北大西洋条約機構(NATO)では欧州の大半の国が「国内総生産(GDP)の2%」に達しているのに、1・5%にとどまっている。トランプ氏は「欧州の防衛負担が少ない」と不満を露わにしており、怒りの矛先が向きかねない。
G7ではこのほか、カナダ、英独の中道左派3首脳が、それぞれトランプ氏とトラブルを抱える。関係作りは難航しそうだ。
カナダのトルドー首相はマクロン氏と並んで、トランプ氏との付き合いがG7で最も長い。だが、18年にG7首脳会議(サミット)の議長を務めた際、関税を巡る宣言の内容でトランプ氏の怒りを買い、「不誠実で弱虫」と罵倒された。
英国のスターマー首相は、与党・労働党が米大統領選で米民主党のハリス陣営にボランティア運動員を送りこみ、トランプ陣営から先月、「外国による選挙干渉」と抗議されたばかり。ドイツのショルツ首相は昨年、「米国は現在の大統領(バイデン氏)の方がいい。再選を望む」と民主党への支持を明確にした。