トランプ氏再選で国防総省に激震? 軍幹部粛清と組織崩壊の危機

アメリカ大統領選でトランプ前大統領が再選を果たした今、国防総省は大きな不安に包まれています。選挙戦中、「目覚めた(woke)」将軍たちを追放すると宣言していたトランプ氏の再選は、軍内部における大規模な粛清の始まりを予感させ、組織崩壊の危機すら囁かれているのです。

軍幹部への不信と忠誠心重視の人事

トランプ氏は1期目よりも国防総省への風当たりを強めると予想されています。NATOへの懐疑的な姿勢や国内の騒乱への軍投入構想など、トランプ氏の考えに抵抗する軍上層部への不信感は根深いものがあります。1期目の政権でトランプ氏を批判した軍幹部の中には、「ファシスト」と呼び大統領にふさわしくないと断言した者もいました。これに激怒したトランプ氏は、元統合参謀本部議長のマーク・ミリー氏を反逆罪で死刑にする可能性すら示唆しています。

altaltトランプ前大統領、フロリダ州での選挙活動中 (2024年11月6日、ロイター/Brian Snyder)

政府関係者によると、2期目のトランプ氏は人事において何よりも忠誠心を重視し、自身に従わないと判断した軍高官や文民幹部を徹底的に排除する可能性が高いとされています。「トランプ氏は国防総省を破壊するだろう。憲法を守る将軍たちを解任しようとするだろう」と上院軍事委員会のリード委員長(民主党)は懸念を示しています。

「目覚めた将軍」の追放と多様性への脅威

トランプ氏はFOXニュースのインタビューで、「目覚めた」将軍たちを解任すると明言しました。「目覚めた」という言葉は、人種や社会の公正さを重視するという意味で生まれた言葉ですが、保守派はリベラル派の政策を批判する際に使用しています。

現在、パイロット出身で広く尊敬を集めるブラウン統合参謀本部議長がトランプ氏の標的になるのではないかと懸念されています。ブラウン氏は黒人であり、2020年のジョージ・フロイド氏殺害事件後、軍内部の差別撤廃と多様性の重要性を訴える動画メッセージを発表しました。次期副大統領のJ・D・バンス氏は、ブラウン氏の議長指名に反対票を投じており、国防総省内にトランプ氏の命令に抵抗する勢力があると批判しています。

軍事政策への影響と倫理的ジレンマ

トランプ氏は選挙戦で、フロイド氏殺害事件後に変更された南北戦争時の南軍指揮官にちなんだ米軍基地名を復活させると公約しました。また、トランスジェンダーの軍入隊を禁止するなど、多様性への逆行が懸念されています。

トランプ氏は不法移民の強制送還や国内の騒乱鎮圧に州兵や現役兵士を活用するなど、軍事政策においても軍の役割拡大を示唆しています。しかし、専門家たちは市街地に米軍を派遣することは違法であり、国民の軍に対する敬意を失わせる可能性があると警告しています。

オースティン国防長官は、軍は文民指導者からの「合法的命令」に従うと強調しました。しかし、トランプ氏が自身の解釈で「合法的」な命令を発した場合、軍は倫理的に問題のある命令であっても拒否できない可能性があると専門家は指摘しています。

文民職員の大量解雇と専門知識の喪失

国防総省の文民職員も、トランプ氏への忠誠心を試されることになるでしょう。トランプ氏側近は、大統領令や法規則改正を通じて現在の文民職員を保守派の仲間に置き換える意向を表明しています。国防総省内では、トランプ氏が文民職員を一斉追放するのではないかとの懸念が広がっており、職員の雇用不安が高まっていると報じられています。

国防総省には95万人近くの文民職員が勤務しており、その多くは専門的な経験や知識を有しています。過去には、トランプ氏がメキシコの麻薬製造拠点へのミサイル発射を検討した際、国防総省の事務方が阻止した事例もありました。「トランプ氏は国防総省の職員と専門知識を空洞化させ、組織に取り返しの付かない痛手を負わせるだろう」と国防総省幹部は懸念を示しています。

国防総省の未来

トランプ氏の再選は、国防総省の組織、人事、そして政策に大きな変化をもたらす可能性があります。 軍幹部の粛清、文民職員の解雇、そして倫理的に問題のある命令への対応など、国防総省の未来は不透明な状況にあります。今後の動向に注目が集まっています。