口唇口蓋裂と共に生きる。それは、想像を絶する困難と偏見との闘いと言えるかもしれません。この記事では、20回以上もの手術を経験し、自らも口唇口蓋裂を抱えながらNPO法人「笑みだち会」を立ち上げ、多くの患者や家族を支える小林栄美香さんの力強い生き様をご紹介します。彼女の人生に触れることで、口唇口蓋裂への理解を深め、共により良い社会を築くためのヒントを見つけていきましょう。
生まれつき唇も鼻も耳もなかった小林さんの幼少期
小林さんは、生まれつき重度の口唇口蓋裂を抱えていました。生後3ヶ月で最初の唇の手術を受け、その後も耳たぶの形成手術など、27歳までに20回以上もの手術を経験しました。初めて乳児期の写真を見た時は、想像を絶する自身の姿に衝撃を受けたといいます。
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4歳頃から自身の容姿を意識し始め、保育園では心無い言葉に傷つき、まるで「空気」のように存在感を消そうとしました。思春期には人間関係に悩み、不登校に。街ゆく人々の好奇の視線や指差しに怯え、マスクが手放せない日々を送りました。
偏見と孤独、そして支えとなった友人たち
誰にも弱さを見せられず、一人で苦しみを抱え込んだ小林さん。自傷行為に走るほど追い詰められた時期もありました。そんな彼女を救ったのは、通信制高校で出会った友人たちでした。様々な事情を抱える同級生との出会いは、小林さんに「自分だけではない」という安心感を与え、前向きに生きる力となりました。
メークに興味を持つようになったことで、次第に容姿へのコンプレックスも薄れていきました。当時を振り返り、小林さんは「一番偏見を持っていたのは、自分自身だったのかもしれない」と語ります。
患者会「笑みだち会」の設立と社会へのメッセージ
9年前、同じ疾患を持つ子の母親から患者会がないことへの悩みを相談された小林さん。これがきっかけとなり、交流会をスタート。そして2020年、NPO法人「笑みだち会」(メール=info@emidachikai.org)を設立し、代表に就任しました。
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出産直後の母親からの切実な相談など、様々な状況にある当事者や家族から多くの声が寄せられています。小林さんは、社会の偏見や無理解こそが患者を苦しめていると指摘し、「多くの人に口唇口蓋裂について知ってもらうことで、偏見の壁を取り壊したい」と訴えます。
一人ひとりの人生を尊重する社会へ
著名な形成外科医、山田先生(仮名)は、「口唇口蓋裂は症状も患者さんも十人十色。一人ひとりの人生を尊重し、多様性を認め合う社会が重要」と述べています。小林さんもまた、自らの発信を通して「生きていて良かった」と伝えたいと願っています。
口唇口蓋裂と共に生きる小林さんの挑戦は、私たちに多くのことを教えてくれます。それは、困難を乗り越える強さ、そして、偏見のない社会を築く大切さです。彼女の人生は、私たちがより良い未来を創造していくための大きなヒントとなるでしょう。