インターネット時代、情報収集の手段は多岐に渡り、新聞のあり方も変化を求められています。今回は、毎日新聞のなりすましアカウント誤報問題をきっかけに、近年注目を集める「こたつ記事」の功罪、そして真のジャーナリズムの姿について考察します。
毎日新聞の誤報騒動と「こたつ記事」問題
人気アイドルグループのなりすましSNSアカウント情報を元に記事を配信し、後に誤報を認め削除した毎日新聞。この一件は、ネット上で大きな波紋を呼び、「こたつ記事」への批判も噴出しました。
「こたつ記事」とは、独自の取材や調査を行わず、テレビ番組やSNS、他媒体の情報を元に作成される記事のこと。手軽に作成できる反面、「メディアの怠慢」「取材の意義を軽視している」といった批判の声も上がっています。
毎日新聞の誤報に関する記事の見出し画像
「こたつ記事」隆盛の背景と課題
なぜ、毎日新聞のような全国紙が「こたつ記事」に手を出すのでしょうか?ネットメディア研究家でコラムニストの城戸譲氏は、取材網維持のコスト増大や新たな収入源確保の必要性を背景に挙げています。しかし、PV(ページビュー)獲得競争は激化しており、後発組の全国紙が成功を収めるのは容易ではありません。
東洋経済新報社 会社四季報センター長の山田俊浩氏は、毎日新聞の「新しいものへの挑戦」という社風を指摘。過去にもインターネット記事を紹介するタブロイド紙を発行するなど、常に新しい試みを行ってきた歴史があると説明しています。
竹中平蔵氏と城戸譲氏、山田俊浩氏の写真
毎日新聞社広報ユニットは、今回の件を「読者の多様なニーズに応えるための期間限定の試験的取り組み」と説明。情報源の真偽確認の重要性を改めて強調しています。
ジャーナリズムの使命と「こたつ記事」のジレンマ
経済学者で慶應大名誉教授の竹中平蔵氏は、「ジャーナリズムとメディアは異なる」と断言。「権力と大衆からの独立」というジャーナリズムの使命を担う新聞は、PV稼ぎのために大衆に媚びるべきではないと主張しています。
城戸氏は、情報源の真偽確認不足を問題視しつつも、「こたつ記事」自体を新たな情報収集・発信の形として否定していません。山田氏も、硬軟織り交ぜたコンテンツ提供の重要性を指摘。ただし、偽情報混入は全体の信頼失墜につながると警鐘を鳴らしています。
真のジャーナリズムを求めて
今回の毎日新聞の誤報騒動は、情報化社会におけるジャーナリズムのあり方を改めて問う契機となりました。「こたつ記事」は、手軽な情報収集ツールとして一定の役割を果たす一方で、情報源の信頼性、ジャーナリズムの使命といった課題も突きつけています。
真のジャーナリズムとは何か?読者のニーズに応えつつ、いかに情報の正確性と信頼性を担保していくのか?メディアは、常にこの問いと向き合い続けなければなりません。