老後資金の確保は、人生100年時代と言われる現代において、ますます重要な課題となっています。公的年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、繰り上げ・繰り下げ受給制度を利用することで、受給額を調整することができます。一見お得に見える繰り下げ受給ですが、今回は70代男性の事例を通して、そのメリット・デメリット、そして老後資金計画の重要性について深く掘り下げていきます。
繰り上げ・繰り下げ受給制度の概要
公的年金は、65歳から受給開始するのが一般的ですが、60歳から75歳までの間で受給開始時期を選択できる「繰り上げ・繰り下げ受給制度」があります。
繰り下げ受給のメリット・デメリット
繰り下げ受給を選択すると、1ヶ月繰り下げるごとに0.7%、最大10年繰り下げると84%も年金額が増額されます。将来の年金収入を増やすことができるため、一見魅力的に見えます。しかし、今回の70代男性のように、必ずしも最適な選択とは限らないケースもあるのです。
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繰り上げ受給のメリット・デメリット
一方、繰り上げ受給は、1ヶ月繰り上げるごとに0.4%(1962年4月2日以前生まれの方は0.5%)、最大5年繰り上げると24%(同30%)年金額が減額されます。早く年金を受け取れるメリットがある反面、生涯にわたって受給額が減ってしまうため、慎重な検討が必要です。
70代男性のケース
70歳まで繰り下げ受給を選択したAさんは、月13万円だった年金が18万円に増えました。しかし、予期せぬ病気により医療費がかさみ、貯蓄が底をつき始めてしまいました。Aさんは、「繰り下げ受給をしなければ、もっと余裕のある老後を過ごせたかもしれない」と後悔しています。ファイナンシャルプランナーの山田さん(仮名)は、「繰り下げ受給は、長生きした場合に有利ですが、健康状態や生活状況の変化に対応できない可能性もあるため、綿密な資金計画が不可欠です」と指摘しています。
老後資金計画の重要性
Aさんのケースからもわかるように、老後資金計画は非常に重要です。将来の収入と支出を予測し、公的年金だけでなく、個人年金や貯蓄なども考慮した上で、最適な受給開始時期を決定する必要があります。
専門家への相談
自分自身で計画を立てるのが難しい場合は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのも良いでしょう。専門家のアドバイスを受けることで、より確実な老後設計が可能となります。
まとめ
年金繰り下げ受給は、メリットだけでなくデメリットも存在します。長生きリスクへの備えとして有効な手段ではありますが、健康状態や生活環境の変化など、不測の事態も想定しておく必要があります。自分自身の状況に合った最適な選択をするためには、事前の情報収集と綿密な老後資金計画が不可欠です。
この記事が、皆様の老後設計の一助となれば幸いです。ぜひ、ご自身の状況に合わせて、繰り上げ・繰り下げ受給について検討してみてください。