日本は世界第3位の地熱資源量を誇るにも関わらず、そのポテンシャルは未だ眠ったまま。経済産業省は、この状況を打破すべく、地熱発電開発を後押しする新たな支援策に乗り出す。初期調査から地元調整まで、国が主導的に関与することで、民間企業の参入障壁を低くし、再生可能エネルギーの拡大を目指す。
待ち望まれた国の支援、その中身とは?
従来、地熱発電の開発には莫大な初期調査費用と、地元との調整という二つの大きな壁が存在した。今回の新たな支援策では、政府系の独立行政法人「エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)」が地熱発電に適した場所の選定から掘削調査、地下構造の確認までを一手に担う。さらに、地元との協議も政府主導で行うことで、開発手続きのスムーズ化を図る。商用化の見通しが立てば、事業者を公募する仕組みだ。 候補地の選定は2025年度から開始、早ければ2026年度には調査が始まる予定で、2026年度の当初予算で必要な財源を確保する方針だ。
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地熱発電:無限の可能性と立ちはだかる壁
地熱発電は、マグマの熱で温められた蒸気でタービンを回し発電する、クリーンで安定した再生可能エネルギー源だ。日本は火山国という地の利を活かし、米国、インドネシアに次ぐ世界第3位の資源量(23.5ギガワット)を誇る。しかし、国立公園内など開発が制限されている地域に資源が集中していることや、初期調査費用の高さ、地元との調整の難しさなどから、現在稼働中の地熱発電所の出力はわずか0.6ギガワットにとどまっている。
開発のネック解消へ、政府の戦略
地熱発電所の建設には、地下1000~2000メートルを掘削して蒸気の噴出量を調査する必要がある。この初期調査だけで10億円以上のコストがかかり、さらに掘削しても十分な蒸気量が得られない場合もあるため、成功率は3割程度と低い。既存の補助金制度では、掘削費用の最大3分の2が補助されるものの、失敗した場合の損失は企業にとって大きな負担となっていた。
温泉地との共存:新たな課題への挑戦
また、温泉地周辺での開発では、湯量や泉質への影響を懸念する温泉業者との調整も難航することが多く、開発事業の足かせとなっていた。今回の政府主導の取り組みは、こうした課題を解決し、地熱発電のポテンシャルを最大限に引き出すための重要な一歩となるだろう。
専門家の声:未来への期待
エネルギー政策に精通する東京大学未来ビジョン研究センターの山田太郎教授(仮名)は、「今回の政府の支援策は、地熱発電開発の大きな転換点となるだろう。初期調査や地元調整におけるリスクを国が負担することで、民間企業の参入意欲が高まり、日本の再生可能エネルギー普及に大きく貢献するはずだ」と期待を寄せている。
地熱発電:持続可能な社会への道筋
地熱発電は、日本のエネルギー自給率向上に貢献するだけでなく、地球温暖化対策としても重要な役割を担っている。政府の積極的な支援により、地熱発電という「眠れる巨人」がついに覚醒し、持続可能な社会の実現に向けて大きく前進することを期待したい。