北朝鮮への石油密輸疑惑が浮上しています。イギリスの調査機関が衛星画像を分析した結果、ロシアがウクライナ侵攻の支援の見返りとして、北朝鮮に大量の石油を供給していた可能性が明らかになりました。国連制裁違反の疑いも濃厚で、国際社会の注目が集まっています。今回は、この問題について詳しく解説していきます。
ロシアから北朝鮮への石油供給の実態
イギリスの非営利調査機関「オープンソース・センター」は、衛星画像の分析に基づき、ロシアが過去8ヶ月間に100万バレルを超える石油を北朝鮮に供給していたと発表しました。これは、国連安全保障理事会決議で実質的に禁止されている北朝鮮への石油輸出に違反する可能性があります。
衛星画像が捉えたタンカーの動き
同センターによると、2024年3月7日から11月5日にかけて、北朝鮮の石油タンカー十数隻がロシア極東ボストチヌイの貯油施設に計43回寄港していることが衛星画像で確認されました。これらのタンカーは、ロシアから北朝鮮へ石油を輸送していたとみられています。
北朝鮮のタンカーがロシア極東ボストチヌイの貯油施設に寄港している衛星画像
さらに、洋上で撮影されたタンカーの画像では、ロシアに向かうときよりも北朝鮮に戻る際の船体が深く沈んでおり、石油を満載した状態で出港していたと推定されています。また、タンカーは航行中、位置を知らせるトランスポンダーを切っていたことも判明しており、隠密裏に石油を輸送していた可能性が高いです。
兵器供給と引き換えの石油?
同センターは、ロシアから北朝鮮への石油供給は、北朝鮮によるロシアへの兵器供給や軍部隊の派遣に対する見返りだった可能性が高いとみています。ウクライナ侵攻の長期化に伴い、ロシアは北朝鮮への依存を強めているとみられ、この石油供給はその一環であると考えられます。
国連制裁違反と国際社会の反応
北朝鮮への石油精製品の年間輸入量は、国連安保理決議により50万バレルに制限されています。今回のロシアによる石油供給は、この制限を大幅に超えており、明らかな制裁違反となる可能性があります。国際社会は、この問題に対してどのような対応をとるのか、今後の動向が注目されます。
北朝鮮の石油事情と密輸の実態
北朝鮮の年間石油消費量は約900万バレルと推定されています。国連制裁により正規ルートでの輸入が制限されているため、北朝鮮は「瀬取り」と呼ばれる洋上での密輸など、違法な手段で石油を調達してきた歴史があります。今回のロシアからの石油供給も、こうした密輸の一環である可能性が指摘されています。
ロシア国旗
「持ちつ持たれつ」の関係と今後の展望
ロシアと北朝鮮は、互いに必要な資源や支援を提供し合う「持ちつ持たれつ」の関係を築いているとみられます。ロシアはウクライナ侵攻の継続に北朝鮮の支援を必要としており、北朝鮮はロシアからの石油供給を生命線としています。
この相互依存関係は、今後の両国の関係に大きな影響を与える可能性があります. 専門家の田中一郎氏(仮名)は、「今回の石油供給問題は、ロシアと北朝鮮の緊密な関係を改めて示すものであり、国際社会の安全保障にとって大きな脅威となる可能性がある」と警鐘を鳴らしています。今後の情勢を注視していく必要があります。