異国の地で懸命に生きる人々の声が聞こえますか? 韓国・忠清北道陰城(ウムソン)には、様々な国からやってきた移民たちが暮らしています。彼らがどんな思いで日々を過ごしているのか、そのリアルな姿を描いた書籍『私の名前は移民』が陰城労働人権センターから出版されました。この本は、私たちに移民という存在を改めて見つめ直し、共生社会のあり方を問いかける一冊となっています。
移民たちの生の声:喜び、悲しみ、そして希望
『私の名前は移民』には、ウズベキスタン、モンゴル、カンボジア、マレーシア、ベトナム、中国、ロシア、ネパールなど8カ国出身の移民22人の物語が綴られています。陰城労働人権センターの活動家、パク・ソンウ氏をはじめとするスタッフが、一人ひとりの移民に寄り添い、彼らの経験と思いを丁寧に記録しました。
陰城労働人権センターの活動家、パク・ソンウさん(右列ノートパソコン前の男性)がフィリピンから来た移住民労働者と話している様子
過酷な労働環境、家族への想い、将来への不安、そして韓国社会への適応など、彼らの言葉からは様々な感情が読み取れます。例えば、ロシア・ウクライナ戦争を逃れて韓国に来たロシア人労働者は、過酷な労働環境に苦しみながらも、安定した職を見つけ、家族とともに安心して暮らしたいという希望を語っています。
不法滞在の影:不安と希望のはざまで
本書では、「不法滞在」というレッテルを貼られ、影のように生きる未登録移民の苦悩にも触れられています。摘発の恐怖におびえながらも、子供たちの未来のために懸命に生きる彼らの姿は、移民問題の複雑さを浮き彫りにしています。
陰城労働人権センターの活動家、パク・ソンウさん(中央の眼鏡をかけた人)がカンボジアから来た労働者たちと話している様子
モンゴル出身のジャルガルさん(仮名)は、娘が韓国で大学を卒業するまで捕まらないことを願っています。ベトナム出身のミナさん(仮名)とマレーシア出身のジホさん(仮名)は、ビザの心配をせずに家族と済州島へ旅行に行くことを夢見ています。
多文化共生社会への道:私たちにできること
20年以上前に中国から韓国に帰化したオ・ソニョンさんは、移民女性たちが偏見や差別に苦しむ姿を目の当たりにしてきました。彼女は、国籍に関わらず互いに助け合うことがより良い社会を築く鍵だと訴えます。 陰城労働人権センターは、本書を通じて移民たちの声に耳を傾け、多文化共生社会の実現に向けて共に歩むことを呼びかけています。
陰城労働人権センターの取り組み
陰城労働人権センターは、これまでも労働人権に関する書籍やパンフレットを発行し、啓発活動に取り組んできました。2022年11月には『こんにちは、労働人権』を、昨年10月には『忠清北道陰城郡の労働者が労働組合に加入すれば』を出版しています。そして今回、『私の名前は移民』を通じて、移民問題への理解を深めるための新たな一歩を踏み出しました。
陰城労働人権センターは、11月30日に陰城郡セングク面の「トトリスプ(どんぐりの森)カフェ」で『私の名前は移民』ブックコンサートを開催予定です。この機会に、移民たちの声に直接触れ、共に生きる社会について考えてみませんか?