しんぶん赤旗、自民党「裏金」スクープの裏側:徹底調査と現場主義が生んだ衝撃

政治資金パーティーの不可解な実態から始まった、しんぶん赤旗による自民党「裏金」問題スクープ。その舞台裏には、徹底的な調査と現場主義を貫く記者の執念がありました。本記事では、このスクープがどのようにして生まれたのか、その詳細に迫ります。

きっかけは違和感:2万円のパーティー、その実態とは?

2021年12月、自民党国交族議員の政治資金パーティーを取材した笹川神由記者は、ある違和感を覚えました。参加者は1人2万円の会費を支払うものの、食事も飲み物も手土産もなく、ただ議員の話を聞くだけ。政治資金パーティーは「対価を徴収して行われる催物」と政治資金規正法で定められているにも関わらず、このパーティーには対価性が全く見られなかったのです。

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元トラックドライバーという経歴を持つ笹川記者は、中小企業の苦労を身をもって知っていました。コロナ禍で多くの人々が生活に苦しむ中、政治家だけが利益を得ている現状に疑問を抱き、「他にも同様の事例があるのではないか」と調査を開始しました。

横展開調査:仮説に基づき、真相究明へ

調査を進める中で、笹川記者は「全友会」という政治団体の収支報告書に目をつけます。報告書には、安倍派と麻生派からそれぞれ36万円、40万円分のパーティー券を購入したと記載されていましたが、両派閥の収支報告書には該当する記載がありませんでした。20万円を超えるパーティー券購入者名は報告書への記載が義務付けられており、不記載は違法行為にあたります。

デスクの山田健介記者は、自民党議員の疑惑は個々のケースに留まらず、党内で共有され組織的に発展するケースが多いと指摘。他の議員にも同様の行為が行われている可能性が高いという仮説に基づき、横展開調査を実施しました。

経験が生んだスクープ:「桜を見る会」問題も

実は、2019年秋に発覚した「桜を見る会」私物化問題も、山田記者、笹川記者らのチームによるスクープでした。SNSで「桜を見る会」に関する情報を見つけた山田記者は、笹川記者を中心に横展開調査を実施。安倍元首相だけでなく、他の国会議員の後援会員も多数参加していた事実を明らかにしました。

徹底調査と現場主義:赤旗スクープの真髄

今回の「裏金」問題スクープは、笹川記者が現場で感じた違和感を出発点に、徹底的な調査と横展開によって実現しました。ジャーナリストとしての使命感と、現場主義を貫く姿勢が、真相解明へと導いたと言えるでしょう。 食料品価格高騰や光熱費負担増など、生活苦にあえぐ国民が多い中、政治とカネの問題は国民の政治不信を増幅させる大きな要因となります。しんぶん赤旗の報道は、政治の透明性を高め、国民の知る権利に応える上で重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

専門家の声:ジャーナリズムの重要性を再認識

ジャーナリズム研究の第一人者である、東京大学大学院情報学環の田中教授(仮名)は、「今回のスクープは、ジャーナリズムの重要性を改めて示すものだ」と指摘します。「権力の監視というジャーナリズム本来の役割を改めて認識させ、今後の報道のあり方にも影響を与えるだろう」と述べています。