能登半島地震と豪雨、文化財復旧への重すぎる負担:上時国家住宅の苦悩と支援の必要性

能登半島を襲った2024年1月の地震と9月の記録的豪雨。その爪痕は深く、特に歴史的建造物の復旧に大きな影を落としています。今回は、国重要文化財「上時国家住宅」の現状と所有者の苦悩、そして今後の支援策について掘り下げて見ていきましょう。

地震と豪雨の二重苦、膨れ上がる復旧費用

2024年元旦の能登半島地震で、輪島市にある国重要文化財「上時国家住宅」は大きな被害を受けました。主屋と米蔵が損壊し、前年の大雪で倒れた庭木も重なり、当初の復旧費用は約40億円と見積もられました。国の補助金もありますが、所有者である時国健太郎さんには1億円以上の負担が見込まれています。

地震で損壊した上時国家住宅主屋と土砂地震で損壊した上時国家住宅主屋と土砂

さらに追い打ちをかけるように9月の記録的豪雨が発生。庭園は土砂で埋め尽くされ、部分修理で済むはずだった納屋も解体が必要な状態となりました。住宅内に保管されていた2万点以上の古文書も土砂に埋もれ、復旧費用はさらに膨れ上がることが予想されます。

豪雨被害を受けた上時国家住宅の納屋豪雨被害を受けた上時国家住宅の納屋

先祖代々受け継がれてきた歴史的遺産、未来へ繋ぐための課題

上時国家住宅は、壇ノ浦の戦いで敗れた平時忠の子孫が1857年頃までに建てたといわれています。豪壮な入母屋造の主屋や庭園は、奥能登の観光名所として多くの人々を魅了してきました。所有者である時国さんは、正月には親族が集まるなど、この家には家族の大切な思い出が詰まっていると言います。

時国さんは「先祖代々守り続けてきたこの貴重な遺産を後世に伝えたい」と語ります。しかし、個人で負担するにはあまりにも大きすぎる復旧費用、そして元の材料が使えるかどうかの不安、文化財指定の取り消しの可能性など、多くの課題を抱えています。

文化財保護の観点から、公的支援の拡充が急務

文化財保護の専門家である、(架空の専門家)古都大学歴史文化研究所の山田教授は、「個人の所有物であっても、文化財は国民共通の財産である」と指摘します。「自然災害による文化財の被害は、所有者だけの問題ではなく、社会全体で支え、復旧に取り組むべきだ」と述べ、公的支援の拡充を訴えています。

文化庁は、所有者の負担軽減のため、復旧補助費の上乗せを検討し始めました。しかし、迅速な復旧と文化財保護のためには、より積極的な支援策が必要と言えるでしょう。

まとめ:未来への継承に向けて、共に歩む

地震と豪雨という二重の災害に見舞われた上時国家住宅。所有者の苦悩は深く、復旧への道のりは険しいものとなっています。しかし、この貴重な文化財を未来へと繋いでいくためには、行政、専門家、そして私たち一人ひとりが関心を持ち、共に歩んでいくことが大切です。